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2006年12月04日(月) レ・コスミコミケ/イタロ・カルヴィーノ

レ・コスミコミケ/イタロ・カルヴィーノ


夕方、外に出てみたら、驚くほど大きな月が
ぽっかりと空に浮かんでいた。



そして見た
別れてきたその場所に彼女はいた
ちょうどわれわれの真上にあたる浜辺に横たわり
何一つ語りかけもせず。
月の色をして、脇にハープを抱え、片手を動かしてはゆるやかな、
間遠なアルペジオを掻き鳴らしていた。
〜〜中略〜〜
間違いもなくあの女(ひと)の何かしらが、千百のさまざまの姿となって見えるのだと、
想像をつのらせるのだ



Qfwfq老人の回想譚、と言ってよいだろう。
読み進むうちに、ぼちぼち語り始めるQfwfq老人のしわがれた声や
しわだらけの手の甲が見えてくるような気がしてくる。
それもそのはず、Qfwfq老人は宇宙が出来る前から存在し続けているというのだから、相当なお年寄りなのである。

上記引用は、この物語の最初の話。
いまはもう遠くにある月が、まだ梯子で昇れるほど近くにあった頃の
せつないせつない恋物語『月の距離』

今日の月を眺めていたら、
なぜかQfwfq老人の溜息が聞こえてきたような気がして
おもわず、白い大きな月のなかに、Qfwfq老人の恋のお相手
Vhd Vhd夫人の妖艶な姿を探し求めてしまった。


「コスミコミケ」とは COSMIC(宇宙)とCOMICHE(喜劇)を合体させたタイトルであるらしい。

そのタイトルどおり荒唐無稽な法螺話なのだが、
喜劇調でありながら、どこか甘酸っぱい読後感。


・月の距離
・昼の誕生
・宇宙にしるしを
・ただ一点に
・無色の時代
・終わりのないゲーム
・水に生きる叔父
・いくら賭ける?
・恐龍族
・空間の形
・光と年月
・渦を巻く



この本同様、米川良夫さんの翻訳ならば、続編の「柔かい月」も読むのに。


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