37.2℃の微熱
北端あおい



 古屋兎丸『Garden』

終電間際、ふらりと入った五反田あゆみBooksで、古屋兎丸『Palepoli』とどちらにしようか散々迷ったあげく『Garden』を買う。
近頃、忘れかけているなにかを思い出させてくれそうな予感がして。

それから、もう10回以上繰り返し読んでいる。
古屋兎丸、ダ・ヴィンチの4コママンガと『π』などが最初に触れた作品だったので、実はさほど気に留めてなかった漫画家…だったのに。
でも、初期作品はいいと教えてくれた人がいたので気にはなっていたのです。
そのとおりでした。
あんまりぽろぽろと泣いているせいか、電車で目の前のスーツの男性が席を譲ってくれました(感謝)。
でも、はたから見ればエロ漫画にしかみえない作品で、なんでこんなに泣いているのか不思議に思われているにちがいありません。
電車で読むような本ではないのだけれど、でも、ページをめくったら文字通り手がとまらなくなったのでした。

読んでいると叫び出したくなるような衝動にかられます。
泣かないで、泣かないで。
分析して。
この衝動がどこからやってくるのか、
ちゃんとつきとめて。

しばらく鞄にいれて持ち歩くことにします。
しばしば見失いそうになる衝動を見失わないために。

2005年06月20日(月)



 好き嫌い

好きなものと嫌いなものを見定めること。
忌憚なく好きだと言えるものに巡り会うのは難しい。
でも、それをさがそうとしないのは怠惰だ、と思う。
自分にとって最高のものを求めようとしないのは怠惰だ、
と思う。(生きるってそういうこと?)

2005年06月12日(日)



 澁澤龍彦記念日

今日は、(じぶんだけの)澁澤龍彦記念日。
きっと生涯で幸せだった日のベスト3にはいるのではないでしょうか
(順位は秘密)。

そう言えば、小林健二作品を直に目にしたのもこの日でした。
二年後の今日は、小林健二talkイベントの日。

2005年06月05日(日)



 ベルリン至宝展

ベルリン至宝展を見に上野へ行く。
ボッチチェリのヴィナスにためいき。
足が止まる。

このヴィナスを見ることが出来たら、展示されていたそのお部屋の他の絵画は見なくてもいい!と言えてしまいそうです
(とはいえ、最初の聖母の絵は素敵でした)。

このあいだのクノップフもそうだったのだけれど、絵の中にひきこまれてしまいます。いったん、絵の中にひきこまれてしまうと距離が消え、距離が消えれば、時間の概念が消えるのです。

美の重力にひかれて、その力のなすがままにヴィナスのまえに額ずきます。

2005年06月04日(土)



 『ハイブリッド・チャイルド』

レシアは棺にとりすがりながらブラウン管をコツコツたたいた。そうすれば再び生き返るとでもいうように。

だが奇蹟はおこらなかった。そこにはなにも現れず、宇宙の暗黒の闇が広がっているだけだった。
レシアはふるえながら思った。
さびしい……さびしい……さびしい……この世界は冷たすぎる……冷たい水のようだ、ここに流れる水のようだ、うすく透明で、寒い、寒い、寒い、青ざめた世界。

ある賢者は言っている−−もし最後のページにきたならば……本を閉じなさい、と。

(大原まり子『ハイブリッド・チャイルド』ハヤカワ文庫、1993)

2005年06月03日(金)



 アビシニアン

たぶん、公園で過ごす四度目の冬。
高齢のアビシニアンに、この寒波はこたえた。
わたしはずっと抱きつづけた。
温めつづけた。
私の肉体が猫の寝床だった。
ずっとそうだった気がする。
アビシニアンのからだがこわばる。
わたしは離れない。
アビシニアンの口から、甘いにおいがする。
わたしは予感に慄【ふる】えるが、悲しみはない。
わたしたちは、充実して生きた。
どこに不幸がある? どこに悲しみが?
わたしに悔いはないし、もちろん、猫にも。

(古川日出男『アビシニアン』幻冬舎、2000)

2005年05月31日(火)



 DIGNITAのマスカラ

泣いてもまったく滲まないと噂のマスカラをようやく入手。
2000年発売のロングセラー、SHISEIDO、DIGNITAのマスカラ。

まつげが針のようにぱきぱきのつんつんになります!
落とすときには専用クレンジングが絶対必要!!

なので、期待は大。
今度こそ涙にも耐えうるマスカラでありますように。
涙腺が脆くなっているいまのわたし、頼むよーとちょっと縋る気持ちなのです(パンダ顔になるのはやっぱり嫌)。

2005年05月29日(日)
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