37.2℃の微熱
北端あおい



 金曜日のコッペリア

よくたべました、とそのひとがいう。
それをきくと、わたしは安心して、さいごのひとくちをビィルで
ながしこみながらおはしをおく。

でも、きょうはなぜかからだのふるえがとまりません。
わらいながら、かたかたとふるえているじぶんに、くすりを追加します。
金曜日の夜遅くのラェメン屋は、注文の声や話し声で、にぎやかでにぎやかで、
男の人達の集団やカップルや仕事帰りのひとたちの熱気と、温かいごはんから立ちのぼる美味しい匂いや湯気であふれていて、隅っこでふるえていても、だれもこちらにきづかないので、安心する(気持ちのいいていどにお互いに無関心だから、居心地はわるくない)。

それでも、目の前のひとにはふるえているのがわかってしまうので悲しい。
いちばんしられたくないひとなのによくみえてしまうところにいるのが苦しい。
にこにこしていても、楽しそうにしていても、それはぜんぶふるえながらだったから(お願い、とまって、もうとまって)。

わたしが、コッペリアのような人形だったら、かたかたとふるえていてもちっともおかしくなかったのにね(でも、人形は食事をしない)。
くすりがきかなかったので、かたかたとふるえるからだのまま、さようならをして主が不在の儘のおうちへむかいます。

2005年11月04日(金)



 腦病院

とうとう腦病院へ行って参りました、水曜日。
正確には腦神経外科。原因不明の頭痛が酷くて酷くてつらいのです。
それもふつうのずきずきするような痛さじゃなくって、脳味噌がぞくぞくして悪寒にふるえているような感じ。
ちょっと遠い病院だったけれど、おだやかな先生にだいぶん緊張が和らぎました。
安心して診察後、さっそく検査のフルコース。
脳波と視力検査(頭痛の一要因かもといわれたのだけれど、以前とかわりなし)とレントゲンとCTと心電図(心臓が弱っているかも知れないとか)と血液検査。

結果は来週です(どきどき)。

2005年11月02日(水)



 ある土曜日



大学時代の友人の結婚パーティ。
外苑前のシチリア料理店までお出かけしました。
懐かしい人たちと再会したあと、下北沢に寄り道。
なんとなくひとりになりたくて。

昨日、夜のお散歩をしていたときに教えてもらった古本屋で、
買おうか如何しようか迷っていたヴィヴィアン・リーの本を買い、読書にうってつけの喫茶店「いーはとーぼ」でぼんやりと読み終えます。

やっぱりヴィヴィアン・リー大好き。
『風とともに去りぬ』より『欲望という名の電車』。

テネシー・ウィリアムズはブランチについてこういっている。
「彼女は悪魔のような生きもので、感情があまりにも大きすぎるため、からだのなかにおさまりきれず、それが狂気のかたちになって噴出してゆくのである」
(アン・エドワーズ/清水俊二訳『ヴィヴィアン・リー』文春文庫、1985)

狂気、狂気、狂気。
これ以上狂わないよう毎日唱えてみる。
だからまだまだ余裕。

2005年10月29日(土)



 洋食屋さん

下北沢に詳しい人と、夜の下北散歩。
ノスタルジックな昭和の香りのする、素敵な洋食屋すこっとで
美味しいハンバーグとクリームチキンコロッケをいただきました。
いつお店がなくなってしまうかわからないくらい、鄙びた処だというので、
どきどきしていましたが、まだあるうちに行くことができて幸せ。
きっと伝説になります、だからいまのうち、いまのうちと、言いながら
畳の上で、正座していただいた洋食は、由緒正しく正統なお味でした。
お店によく森茉莉や金井美恵子が来ていたって聞いて、それだけでも嬉しくってはしゃいでしまいます。まだ少女魂は死んでいないみたいだわ。
ほかにお客さんもいなかったので、貸し切り状態でこっそり贅沢気分!!(行きたい方、場所案内いたします)。
古本屋を覗いたり、喫茶店を覗いたりもしたので、すっかり満足しておうちへ帰ります。




2005年10月28日(金)



 『エミリー・L』

あなたはわたしといっしょに笑う。わたしは言う。
「わたしがこわいのは、あなたなのよ」
あなたはその言葉にほとんど驚きもせず、冗談に仕立ててしまう。
「ぼくの何がこわいのさ」
「あなた全部よ」
わたしはなおも恐怖についてあなたに語る。
あなたに説明しようとつとめる。それがうまくゆかない。
わたしは言う。「わたしの心のなかで起こることよ。わたしから分泌されて。天与のものでありながら同時に細胞の活動にもかかわる、逆説的な生命力をもって生きているものよ。そこが大事な点よ。自分はこうなのだと述べる言葉をもっていない。せいぜい言えることは、それがむき出しの、口のきけない、わたしからわたしにむけられる残酷性で、わたしの頭のなか、わたしの心の監獄に住んでいるものだということね。厳重な防護壁に守られている。ところどころに理性、真実性、光にむけての明かりとりがついているのだけど」
あなたはわたしを見つめ、そのままほうっておく。もっと遠くのほうを眺めている。
あなたは言う。
「それは恐怖だ。いま言ったことはまさに恐怖だ。そうさ、それ以外の定義はない」
(マルグリット・デユラス/ 田中倫郎訳『エミリー・L』河出書房新社、1988)

2005年10月26日(水)



 脱出

久々に東京脱出。
ちょっと大都市を離れて参ります。


2005年10月22日(土)



 体力

仕事で知ることとなった写真家さんのおうちにて、歓待を受けました。
お酒とお食事の美味しかったこと、おなかが一杯で苦しいです。

体重がなかなか増えずにむやみに、周囲の恐怖を煽ってしまう最近ですが、
けっこう体力も温存している…はず、なのに、お酒を呑んでいたら、寒くなってしまい、ハロゲンヒーターだの暖かいフリースの上衣だのと、いたれりつくせりしていただいて、とっても恐縮。

でも、お酒の量は昔(体重減前)と変わらない。
酩酊度も変わらない。

なのに、お酒が脱けるときに寒くなってしまうのは、
エスカレートしたかもしれない、と気づく。
冷え症は進行中!?




2005年10月21日(金)
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