2004年03月13日(土) |
生物学的社会学的アイドル論 |
この地球上を観察すると、 生命というものがある程度複雑に進化した段階においては、 雄と雌に分かれて、また合体して子孫を残すという、 単純な自己複製による種の絶滅を回避する行動が目られる。
人間社会においてもしかり。 ただし超高度に分業化、階層化されてしまった現代社会は、 ある種のジレンマを抱えている。 それは健康に発育した男女(13〜16才程度)が、 発情期に達したにもかかわらず、 自然な求愛行動(ディスプレイ)を行い、 その結果交尾を行い子孫を残すという、 自然な生殖行為が阻害されていると言うことである。 これは文明化されている土地ほど顕著である。
しかしながら文明とは必要悪を生み出す天才でもある。 この場合の必要悪とは「擬似恋人」の発明である。 情報伝達手段の発達した近代において、 マスメディア(テレビ・ラジオ・広告・雑誌など)が、 一種の錯覚を利用して発情年代らに巧妙に働き掛けていく。
自然界におけるディスプレイにのっとって、 「擬似恋人」つまりアイドル達は魅力的な容姿をもって微笑みかけ、 時には胸部や太ももをチラつかせている。 発情年代はそれらを実体のある求愛行動と混同してしまうのである。 そしてお返しのディスプレイとして様々な「消費」を行うことにより、 自己の欲求を満たしていくのである。 まずは少年雑誌のグラビア購入に始まり、 音源、トレーディングカード、生写真、DVDへと深みに嵌る。 最終的にはライブ活動への、有料参加と言う着地点ヘ到達するであろう。
しかしながらあるとき彼は大きな壁に突き当たる。 それは自己の消費活動によってアイドルがいっそう肥大化共有化してしまい、 所有的満足感を奪われていくというジレンマである。 自然界において一組のカップルが成立するためには、 雄同士の穏やかあるいは怪我をともなう対決が起きる。 ファンと呼ばれる絶対的多数を相手にしなくてはならないのは実際的ではない。 彼らを敵にしていたのではアイドル自身に嫌われるのだ。 何故ならばファン全てがアイドルにとっての求愛(搾取)対象だからだ。 そこで解決策がもうけられる。
「ファンクラブ」というコロニーへの参加による自己欺瞞である。 さらには「追っかけ」というエネルギーのいる巡礼行動による発散行動ヘ至る。
これらの共利共生に馴染めない一部のマニアは「妄想」という暗い場へ逃げる。 妄想とは“彼女を本当に理解して愛しているのはこのボクだけだ” という一種の狂気である。
”オタク”はいつしか自分だけの世界に浸り人の意見に耳を貸さなくなる。 しかしながら”オタク”の自己暗示を解くたったひとつの鉄槌が存在する。 それは皮肉にもアイドルを生み出したマスメディア自身なのである。 ある日”オタク”はテレビ、週刊誌、スポーツ新聞によって現実へと引き戻されるのだ。
『電撃☆恋人宣言!』 『入籍発表!お相手は18才年上のプロデューサー』 『妊娠発覚! 純真アイドルの実態!!』
これら言葉の毒矢にみまわれた”オタク”は計り知れない精神破壊を受ける。 鬱になって食事も喉を通らなくなる。 学業職業への意欲も大いに損なわれるであろう。
しかしながら彼もいつまでも沈んでいるわけではない。 これまたマスメディアの用意した新手の擬似恋人の登場によって、 沈んでいた心が救われるのである。 そして振り出しへ戻る。
この奇妙な擬似求愛行動が実は大人達によって操作されたもので、 壮大なる経済活動の一環であり、巧妙な搾取であると気づくまで、 彼ら「アイドルオタク」は永遠ループから抜け出せないまま、 20代、30代へと成長していくのである。
かくいう私がそれである。
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