断捨離がもてはやされるなかで、私も漏れなく捨てまくっていたのだけど、ときどきふと怖くなることがある。
それは電車なんかに乗ってて、かなりくたびれたコートを平気な顔で着ている、普通な雰囲気のおじいさんを見かけたときなんかだ。 「普通な雰囲気」とは乱暴な言い方だけれど、経済的にすごーーく苦労してるわけではなさそうで、むかしはきちんと働きに出ていたんだろうな、と感じさせるなにか。
そんなきちんとした感じの人が、よくみるとずいぶんくたびれたコートを着たりしていると、はっとする。 まだ着れるだろう洋服をたくさん捨てたけれど、経済的に老後の見えないこの日本で、ある日安易に処分した洋服のことを後悔したりするのだろうか…と。
仕事も辞め貯蓄もあまりなく年金もわずか、それなりに身体もガタがきて病院にもかかっている。
あら、コートがずいぶん色褪せたわね、擦りきれている所もあるわ。 でも新しいのを買うのは…そうねもう少し我慢しましょう。
まあこうなるだろうな、と思うわけで。 そのときに若い頃のコートなんか、もし取っておいても役に立たないんだけど、もったない捨て方しちゃったなって思わないかしら。と考えたりした。
いま手放したそのぶん、いつかまた手元に戻ってくるといいのだけれど。
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