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ラヂオスターの悲劇
トマーシ
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2005年12月21日(水)
睡眠と覚醒の飛躍

非常に限られた空間にて、適度に湿り気があり、全くの無音で、そういう特別な膜を、隠された明確な悪意をもって丁寧に緊密に張り詰めたかのように無音で、冷気にみちみちていて、そんな床から染み出してくるような寒さが外に吹き荒れる木枯らしから完全に遮断されていて、密閉されていて、理科の実験室みたいな白い配管が剥きだしになっていて、おそらくそのくだは何も通していなくて。何も流れていなくて。試しに割って覗いてみたら、少し硫黄じみた辛気臭い臭いしか感じ取ることが出来ないはずで、

そんな部屋にどこからともなくバスケットボールが転がってくる。最初は勢いよく、直角に叩きつけるようなバウンドを刻み、徐々にそのバウンドは小刻みに、破裂したような高いバウンド音もそれに伴って低い周波数へ、その高いバウンド音が覚醒の音なのではないだろうか?一瞬そんな錯覚が頭の中をよぎる。バスケットボールはまるでティンパニーの上を転がっているみたいで、最初から最後まで克明に、ある意味執拗に、その空間の中にバスケットボールの弾む音は響き渡る。

やがて無音。そしてそのボールはやはり眠りから覚醒への段階的なイメージだったのだ。うっすらとした息を吐く音で目が覚めた。