大 将 日 記
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出演者が演出をするのは非常に疲れる。 今回の公演は私が演出として名を出しているが、本当は違うように思えて来た。 私はただ決定権を持っている座長にしか過ぎないのである。
「セットの○○の大きさは?」 「このシーンの照明の色は?」 「この時の音はフェードインですか?」
本番が近付くにつれ、制作サイドからいろんな質問が飛んで来る。
先日の稽古で、いよいよラストシーンの稽古を本格的に作り込みに入ったのだが、 今回は音に合わせて台詞のタイミングを取らなくてはなにないので、役者達は結 構大変な思いをしているだろう。 しかし、このラストシーンがとても大切な事は全員が解っていて、うまく行けば かなりいい形で緞帳が降ろせるのは間違い無いと言う事を皆は知っているが、こ のシーンの演出がなかなか役者に伝わらなくて悩んでいた。
その時、監修の夕鶴みきが一言だけ役者に助言をしたら、役者達の動きと声量が 突然に変わった。
そうだ、俺はこう言う演出をしたかったんだ。
何度も何度も師匠・夕鶴みきの言葉に大きく頷いた。
演出として名前を出す以上、全ての決定権は私にあるのだが、逆に物凄く怖い事だ と言う事に改めて気が付かされた。
緞帳が下がり切るまで、拍手が鳴り止まない事を祈るばかりだ。
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