三十一文字
ナオコ



 短歌*片恋

  目が合ったからにはキスして 抱きしめて 
   無罪放免なんてさせない

  困らせたくないから嘘をついてみた
   困らせたいから笑ってみせた


2004年05月10日(月)



 短歌*夜

  ラテックス製コンドームダース入り 
   それは十二個分だけの明日  

  肌と夜を重ねる夜ごとに
   何だか嘘が増えてきますね

  耳元で甘い寝息を聞きながら
   肩寄せあって眠る 寂しい


2004年05月12日(水)



 残留思念

私の心からあなたに関わる部分が全て消えれば
私は完全に無機質な人形になれるのに
何が複雑な形に私の胸に刺さって食い込んで
こんなに抜けないんだろう。
こんなに苦しいのは。
こんなに苦しいのは。
いまだにこんなに苦しいのは。
腐敗した部分をごそっと棄てるように
ドロドロした部分をこそげ落とせたら
きっと完璧な笑みを浮かべる完璧なロボットになれるのに。

私は何も感じず、何も失わない人になれる。
私は永遠を得る。私はもう泣かない。
あなたを忘れることすら出来たら。
削いで捨て去る事すら出来れば。

するすると逃げないで。
私の心の中を泳がないで。
もう消えて。安らかに。

2004年06月17日(木)



 短歌*仮面

  この顔に被る仮面は水溶性
    だから泣いてはいけないのです

2004年06月20日(日)



 短歌*中央線から。

  口紅を塗り直したい電車内
    足踏みしつつあなたへ向かう


  吊り革の向こうの夜に映る顔  
    君が溶け込む街まで少し

2004年07月21日(水)



 短歌*寝顔

  何が怖いのかもさっぱりわからずに
    あなたの寝顔を見ているのです

  人肌のお湯に浸かれば
    ゆっくりと一日分の「寂しい」溶けて

2004年09月13日(月)



 短歌*明日

  明日なんか来ないと言い張る頑なな
    誰かの口を閉ざして日曜

  傷付ける事さえ厭わなくなれば
    そっと出て行く 明日は曇り

  「そこにある<未来>はきっと偽物よ」
    「それでも構わないから行こう」

2004年09月15日(水)
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