ヤグネットの毎日
DiaryINDEX|past|will
どんよりとした朝だった。東の空をみると、オレンジの朝焼けがちょっとだけ顔をのぞかせる。 「もっとみたいなぁ」という思いをしまいこんで、朝の駅宣へ。JR長池駅では後援会の方が、奥村議員とともにビラ配布に参加。おそろいのヤッケを着込んで、気合い十分だ。 昼間は、議会の一般質問。最終日で3人の議員が登壇。本城議員の数時間(笑)に及ぶ質問もすごかったが、与党議員の超短時間(20分?)の質問にも驚いた。質問原稿と答弁が妙にマッチしている。まさか、当局に質問原稿をお願いしたわけではあるまい。そんなことをしたのでは、議員の役割の放棄に等しいことだ!と心のなかでつばをはいたとたん、はたと考えた。僕だって、演説や日常発する言葉のなかで、自分の気持ちを素直に自分の言葉で表現する努力をしていただろうか?その質問を聞いていて、まったく心に届かなかった自分に気づき、「借り物のの言葉とは、こういうことだな」と妙に納得できて、ひとりでニヤリとした。 昼休憩のとき、精神障害者のHさんと昼食をとりながら話をする。Hさんからは4年間、ことあるごとにお話を聞かせていただき、議会の質問でも何度もとりあげさせていただいた。 今回は、「選挙公約のなかに、『精神保健福祉の充実で心の健康を大切にします』という一文を入れてほしい」というお願いと将来のことで相談をうけた。 とても自らに厳しいHさんは、食事がくるまでの間、自らの人生をふりかえり、ポツポツとしゃべる。 心の病が原因で家族ともバラバラになり、ひとりで生き続けなければいけないことを思うと、ときどき、つらくて、せつなくて、やりきれなくなる日が続いたこと。まだまだ精神障害にたいする世間の偏見の目が気になって、葛藤する毎日だったこと。 悩んでいても仕方ない、自ら殻をうちやぶることが必要だと、精神保健に関するニュースを自分の知り合い、近所などに定期的に配る活動をもう何年もつづけている。僕は、ささやかだけれど少しでもHさんの「挑戦」に貢献したいと、その印刷のお手伝いをさせてもらっている。 料理がはこばれてきたころ、Hさんは、自分のこれからのことを話しはじめた。Hさんは、グラタン。僕は、ハヤシライスだ。Hさんは一時期、調理師をめざしたことがあった。そこで、60歳をすぎて調理師の免許をとりたい、という。ヘルパーも資格もとって、同じ苦しみをもっているひとの力になりたい。共同作業所やグループホームで料理をつくって、もてなしをしてあげたい。それが、願いだというのだ。しかしそれには、いくつものハードルがある。精神障害者には、バリアがいくつも存在するのだ。 Hさんは、「苦しむことに感謝しながら生きるというのは、大変な事ですね」と自分のこれからの話をしめくくった。
僕も、なぜか選挙を控えた自らの心境を話しはじめていた。
「Hさんのように、いろんなことが原因で、生きることがつらくて、せつなくて、やりきれなくなる人がたくさんおられますよね。僕は、そういう人たちの心に響くような活動ができてきただろうか?そして、『なんとかならないのか!』という地底からわきあがるような訴えを、正面から受け止められるような力があるのか?と時々不安になることがありました。いまも正直いってあります。でも、「強くある」ことが大切ではなくて、人々の心の叫びに自らの心を響かせていく、ありのままの姿をみてもらうことのほうがずっと大切なんだと思うようになりました。」
僕の話をきいていた、Hさんは、僕の話がおわると、食事の手をとめぼそっといった。
「府民の代表となる人なんですから、大木のように、少々の雨風にはびくともしない人間でいてもらわんと困ります。」
大地に根を張り、大空にしなやかに枝葉をのばす大きな木。そうだ、大樹。 僕の大好きなもののひとつだった。もっとうんと若い頃、いつも大樹をみつけては幹をさすり、てっぺんをみあげていた。「大樹のような大きな心とおだやかな目でしなやかに生きたい」ーー政治の道に足をふみいれたころ、目標としていた自分像が「大きな木」そのものだった。 大きな木のイメージが心のなかで広がり、なにかがふっきれたような感触。はしなくもHさんの前で涙があふれそうになった。「これはヤバい」。そう思って、あわててハヤシライスを口の中に流し込んだ。
夕方、寺田西地域を飯田議員とともに宣伝。 西のほうには、建物がたっていないので、西の空がいっぱいみえる。きれいな夕焼けが街を染める。 朝、オレンジの朝焼けをもうちょっとみたい、と思ったけれど、この夕焼けにとても満たされた気持になった。人間は強くなりたいと思って、強くなれるわけではない。自分らしく、人間らしく生きたいと思い続けることの積み重ねが、悲しみ、喜び、怒りに心を響かせ共感できる、「強い」人間をつくるのだ。
夜は、会議に参加。告示まで、あと25日。
人々の心の叫びに自らの心を響かせていくありのままの姿をみてもらいたい、何千、何万の瞳に。何千、何万の耳と心に僕の思いを届けたい。さぁ、闘いは、いよいよ佳境だ。時間がない。走り続ける、明日も明後日も、その次の日も。もちろん、選挙がおわっても!
|