2012年05月24日(木) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)102 |
「リールがどんなやつかって?」 ティル・ナ・ノーグへ向かう途中、そんな話をお兄さんとした。 「リール様って死と再生をつかさどるんですよね。きっとすごい方なんですよね」 たゆたう海の上で。 「君はどんな方だと思うかい?」 藍色の髪をしたお兄さんに感じたことを素直に伝える。 「とても力強くて逞しくてすごい方?」 「……すごい、というところは否定しないけどね」 「違うんですか?」 海を司る精霊。大地、空を司るのがニーヴ様なら海を司るのはリール様で。この広大な海の支配者がすごくないはずがない。 「違わない。ただ、補足する部分が多々あるだけだ」 なのに目の前のお兄さんはこめかみを抑えながら、まるでかの人となりを知っているかのように話す。 「偉大ではある。けれども偉大の程度が偉大過ぎる。周りの迷惑も考えてほしい」 曰く。酒を飲んでは暴れまわるとか。 曰く。酔ってリサイタルをやるのは勘弁してくれだとか。 曰く。どれだけ家族(ファミリー)を増やせば気が済むんだとか。 「ったく、ふざけんじゃねぇよ。あのくそ親父。オレはあんたの尻拭いをするために生きてるんじゃねぇ」 「ええと、お兄さん?」 今までとうって変わった物言いと剣幕に声をかけると、はっとした表情を見せた。 「ごめん。力が入りすぎた。忘れて──」 「お兄さんはもしかして、リール様の関係者なんですか?」 「関係者というか──」 「神官様って、ニーヴ様ばかり信仰されているのかなって思ってました。こんなところで海の神官様にお会いできるなんて思ってもなかったです」 「いや。それもどうかと──」 「もしかして、まだ神官様ではなかったですか?」 神官を名乗るにはお兄さんはまだまだ若い部類に入るんだろう。もしかして神官になるための旅の途中だとか。 「……そういうことにしておくよ」 お兄さんはそう言って苦笑いを浮かべた。
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