2012年08月02日(木) |
伊織の手紙−海より−(仮)・2 |
「海に行ってみませんか?」 ことの始まりはパティのこの一言だった。 「明日は定休日ですし、せっかくだからみんなで出かけましょうよ」 藤の湯は月に一度だけ定休日がある。もちろん他にも休みはあるし職員が代わりがわりにお休みをもらっている。明日はパティの休日というわけだ。 「行ってこい。ここ(藤の湯)は俺がなんとかしておくから」 一日くらいどうにかなるだろ。そう言ったソハヤさんの声を他ならぬトモエさんがさえぎった。 「ソハヤさんも行くんです」 「海に行きたいんだろ? だったら」 「だからこそソハヤさんも行くんです」 心なしか声が沈んでいるような気もする。 「パティちゃん少し先延ばしにしてもいいかしら」 「いいですよ。来週はみんなお休みですし、みんなで行った方が楽しいですもん」 そんな感じで藤の湯御一行の海遊びが決定しました。 ――で終わるところだったんだけど。 「だったらお前も行けよ」 なぜかその場に居合わせたわたしにもお声がかかった。 「わたしは施療院の手伝いがあるから無理ですよ」 笑ってごまかそうとしたけどそうは問屋がおろさなかった。 「だったら施療院の面子もそろえればいいじゃねえか」 「でも先生がなんて言うか――」 「せっかくだからイオリちゃんも行こう。楽しいよ」 「お弁当だったら私が作るから心配しないでね」 純粋な二人の瞳に迫られて、先生がいいと言ったらですよと念をおしてその日は帰った。
過去日記
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