日々のボヤキ

2001年12月26日(水) 決着

部長のもとへと、海堂は急いだ。
早く答えを出したかったから。
出して、乾に伝えたいことがあるから。自分はまだ、何も伝えていない。
「部長……」
「どうした、そんなに急いで」
「昨日のことなんすけど」
来てみたものの、何と言ったらいいのだろうか?
賭けは賭けだし…。
でも、部長と付き合うわけにはいかないから…!!
「あぁ。乾とはもう話したのか?」
「部長が、賭けのこと乾先輩に言ったんすか?」
この状況から考えると、そうとしか言えないだろう。
「あぁ、俺が言ったんだ。『海堂は俺のものになる』とな」
手塚は乾に勝つと宣言しに行った。
それ程に、自信があったんだろうか。
でも――――――――……。
「俺は、部長とは付き合えません。約束を破ることになるけど…」
「そんなに乾がいいのか?」
「乾先輩じゃなくちゃ、ダメです」
これは本当だ。
いつも近くにいて、気がつかなかったけど。
あの人以外の人と付き合うなんで、考えたこともなかった。
「俺は、あの人が居てくれたから変われたんです。
あの人がいなくなるなんて、考えれません」
海堂はキッパリと手塚にそう言った。
いつも、自分気持ちを伝えないからいけなかったんだ。
だから、すれ違ってしまうんだ。
「俺は、乾先輩が好きです」
あの時言えなかった言葉。
今は、ちゃんと言える。
「……………そうか」
「…」
「なら、仕方ない。この賭けはなかったことにしてやる」
「すんません」
「でも、俺はお前を諦めたわけではない。それだけは覚えててくれ。
俺も、海堂を愛してるんだ」
手塚のその言葉に答えることは出来なかった。
自分は、部長の気持ちを受け入れることが出来ないから。
部室からそっと出ていった。







「いつまで隠れてるつもりだ?」
「なんだ、バレてたのか」
「当たり前だ」
乾が部室へと入ってくる。
初めから、聞いていた。
「やっぱり卑怯だな、お前は」
「うん、俺もそう思うよ」
苦笑する。
「でも、まさかお前がこうもあっさりと引き下がるとは思わなかった」
乾は意地悪く聞いてくる。
本当はわかっているのに。
なぜ乾なのか、手塚は内心イライラしていた。
「あそこまで言われて、何を言う?」
「まぁ、ね」
でも、乾もまさかあそこまではっきりと言うとは思いもしなかった。
自分なんかのために……。
「乾。海堂がずっと自分のものだなんて思うなよ。
絶対に手に入れてみせる」
「やれるもんならな。俺は、どんな手を使っても海堂を離さない」







愛する者のためなら、何だって出来る。
彼が、俺を愛してくれると言うなら絶対にだ。
戻ったら、彼に伝えよう。


『愛してる』と…………


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峰谷 薫 [MAIL] [HOMEPAGE]

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