2004年11月13日(土) |
ケン・ヒル版『オペラ座の怪人』 |
初めての『オペラ座の怪人』…白々しい始め方ですが、『ケン・ヒル版』は初めてです。 今まで、私にとって『オペラ座の怪人』といえばロイド・ウェバー版、しかも私のファントムはあの方でしたが、それでもケン・ヒル版に興味がなかったわけではなく、むしろ観たかったけど…前回来日の時には違う演目を優先させたので先送りになっていたものが、漸く観ることができた訳です。
ケン・ヒル版…ケン・ヒルは作詞家。 通常、ミュージカルのタイトルの前には作曲者の名がつくようだ。 なのに何故に…と思ってましたが、納得。 曲はオペラの曲を使っているから。
そのせいかミュージカルというよりもオペレッタ入門編といった趣に近く、グノーやヴェルディなどの曲が散りばめられているゴージャスさでした。 それにケン・ヒルがファントムに合わせて詩をつけたらしいのですが、そういう違和感などはなく、元を知らない人間ならオリジナル曲と言っても通じそうなほどに曲と内容がマッチしていました。 ロイド・ウェバー版ほど華美でもロマンスばかりが強調されるわけではないけど、一番原作に忠実で切ないファントムでした。 重厚なお金のかかった装置のロイド・ウェバーもいいけど、アール・ヌーヴォーなケン・ヒルも素敵。 『娯楽』が観たい人はロイド・ウェバー版。 『物語』が観たい人はケン・ヒル版…といったところでしょうか。
ティム・ライスはファントム製作の時にロイド・ウェバーに『やるなら全編オリジナル曲にした方がいい』と進言したそうですが…ケン・ヒル版を観て、納得。 あれがオリジナルでなく、オペラから使い回していたら『ケン・ヒルの真似』と言われていただろうと容易に想像できる。 ただでさえ『プッチーニの真似』と言われているのにオリジナルにしなかったらこれだけの成功はありえなかったと思う。
さて、今回も来日公演でしたが、キャストの実力もレベル高〜い! やはり、曲目が曲目だけにオペラ畑の人達が出演しているので歌は素晴らしいものがありました。 が、オペラを歌えない人との唱法の違いがくっきり。<オペラ歌えないからって下手な訳じゃないけど、基礎がしっかりしているビブラートには迫力負けってことで。
ファントムはあまりロマンス色がないからロイド・ウェバー版ほどにはシルエット(あの演出には最も重要だと思う!)についてうるさくは問わない。 途中に舞台の構成が結構、無茶な感じもあったけど…切ない声のファントムでした。 …このファントム、観ていても眼はハートに変わってしまわないけれど、いいですよ。 卑劣なところも有り、哀愁漂うところも有り、ロイド・ウェバーじゃ語られない陰の部分もちゃんと語られてたってのがいいです。
来日公演じゃなくて祐一郎さんがやってくれないだろうか。
『結局それか!』って言われそうですが…オペラ畑出身でもないのにあのバズーカを持つ方に歌ってほしい! 聴いてみたい!……実現してくれないかな〜。<でもその前に来日でも国内キャストでも『Dracula』やってほしいよ。(;;)
内容はシリアスなだけじゃなく、コミカルな場面も多く楽しく惹きつけられます。 のっけから『あのシャンデリアは危なそうだ』などと強調して『あそこが危ない』『いや、こっちだ』『安い席は安心』などと笑わせてくれます。<私は2階の安い安全な席でしたー。(^^)
ただ、惜しむらくは訳がよろしくない。 今回も字幕というのか…『電光掲示棒』があったわけですが、登場人物の名が英語読みとフランス語読みが混在しているのはいかがなものかと思う。 字数制限があるからしょうがない面もあると思うが、会話に対して訳が簡潔すぎるのは味気ないです。 あとは…ケン・ヒル版でもラウルは顔はいいが短絡な男だったとか、クリスティーンはどこかの劇団のヒロインと違ってグラマーだったとか、ジャムの足首があまり細くないだとか、まあいろいろありました。
でも、最も驚いたのは…13人だけでやっていたこと。 当然一人何役もやってるわけですが…13人だけとは思わなかった。 いくらなんでも20人くらいはいると思っていたから。 おまけに、客席の脇を通って通路から現れたり、2階席にもオペラ座の職員(笑)が登場しました。 開演前に音響監督が2階席まで来て入念に何事かをチェックしていたのですが、こういう演出だったからなんですね。
そんなこんなで非常に楽しく、いいものが観れました。
ただ、東京厚生年金会館はマナーが悪すぎる。お客も係員も。 先ず、開始直後に席を立ち、2階前方の通路で座り込んでいたオバハン! 係員に注意されて『乱視と近視で見えない』って言い訳してたけど、それなら2階席…しかも、A席のチケットを取らないで下さい。
『通路で座ってるからいいでしょ』って…良くないから係員が注意してるんでしょが。
最近、とあるメルマガで読んだ「簡易“オバサン”診断基準」ってのは3つのキーワード 【1】ハジライ 【2】ミサカイ 【3】ウエスト これらの「ある」、「なし」で判定をする…というものを思い出しました。 なるほど、このオバサンにはそのどれもがなかった(笑)。 100%ピュア認定オバサンですね。
そして、遅れて席につく人もむちゃくちゃ多かったけど、遅れて来たくせに堂々と背筋を伸ばしたままで席につくからそのたびに何度も邪魔されました。 そういう場面に限っていいところで……思い切り水を注されました。
音は小さくではありますが、携帯の着メロもちゃらちゃらと流れました。
…ロイド・ウェバーのファントムを着メロにする人なら『劇場ではマナーモードにするのがマナー』なのではなく!『携帯の電源を切るのがマナー』!!!だってことを頭に叩き込んでおいてほしいものです。
でも、最高にむかついたのはプロ根性のない係員です。<アルバイトですか? 遅れてきたお客を誘導するライトを高く上げたり、動くたびにポケットの中の金属がちゃらちゃらとうるさいんですけど!携帯ストラップなの?コインなの? いくら、アルバイトでももうちょっとちゃんと研修くらいしたら?
内容的には大満足だけど、それに携わる人がいけない見本。 まだフォーラムでやってくれたほうが嬉しかったかなー。<建物立派だし。普段の遊び場に近いし(笑)。
でも、内容的には良かったから…再演したらきっとまた行く。(−−;
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