2004年12月28日(火) |
NINAGAWA『ロミオ&ジュリエット』&『SHIROH』 |
『ロミオ&ジュリエット』…あまりにも有名なシェイクスピア悲劇です。 そして、関係者らしき人にも見られている…と承知の上で私はまた呟きます。
『ラブコメにすらなりそこねの悲劇』…だと。
正直に言って、『ハムレット』が結構ツボにはまっていたからまた藤原君と杏ちゃんが主役で今度はどういう色になるのだろうと楽しみにしていた。 でも、前作があのおっそろしく儚さとは無縁なオフィーリアだっただけに私は『ロミオとジュリエットのキャストは逆希望〜』と言っていた。 今はどうかというと…『やっぱりロミオとジュリエットは逆でお願いしま〜す!』と叫びます。 …やはり、私の第一印象(でもないけど)は正しかった。
確かに、杏ちゃんは前作よりはまだ可愛らしくなってました。 …でも、相変わらず『恋する色気』はないもん。(ノ_;)
だから、どの人にこの逆キャスト説を言ってみても納得してもらえちゃいました。 『じゃじゃ馬ならし』ならともかく、あの健康的キャラクターでジュリエットやオフィーリアはちょっと荷が重過ぎるのではないかと思います。
まあ、演技力でいえば藤原君よりは上でしょうが…この子は体力も上…(−−; 舞台から降りて客席脇の通路を通って行く時、ロミオは息切れがもの凄いのにジュリエットは平然と駆け抜ける…客を睨みつけながら。 プロ根性としては誉めてあげますし、むしろこの場合、情けないのはロミオの方だけど…ロミオを押倒しそうな勢いのあるジュリエットはいや。(;;) そして、健康的なだけに…白のノースリーブの衣装の時、脳裏に閃くのはやはりハイジ…アルムの野山をシュミーズで転げ回るハイジ…。(じゃあ、ロミオはハイジに振り回されるペーター…?(^^;;;)
もう、それで頭の中が埋め尽くされちゃって可憐な…と思っていた…ジュリエット像がガラガラと音を立てて崩れてゆきました。 だから…この年代の子の中ではダントツに巧いのはわかるけど、もうちょっとイメージってものも重視してください。
…ということで体力のなさげな、杏ちゃんより二の腕細い藤原君をジュリエットに希望(笑)。
第一に、藤原君はハムレットが抜けきれてないから短絡に恋だけに突っ走っていくロミオでもない…。 あれこれ悩んでおきながら弾みでジュリエットの従妹を殺しちゃった…っていうよりは何にも悩んでなくって家同士が仲悪いのだって何とかなると思っててその挙句に『あ、やっちゃった…』っていうお気楽さがあってもよかったんじゃないかな…。 私はロミオとはあれこれ悩んでいるように見えてもその根幹は能天気だと思っている。そして、その短慮で浅慮な考えのなさが後の悲劇に繋がってゆくのだ…と。 言い換えれば、ロミオさえもっと思慮深く大人でさえあればああいうラストにはならなかっただろうと…。 だから、どうもハムレットを引きずっているロミオは嘘臭い。
その他のキャストについていうなら…まず、ジュリエットの従兄とその取り巻きは…濃ゆい! ロミオとそのお友達との対決なんて体格差がもの凄くって勝負にすらなりません。(><) ロミオチームの身体はペラペラ…鈴木さんがロミオ側に入っていたのが唯一の良心…という感じがしました。 ジュリエットチーム(笑)のが逞しく、『筋肉とはこういうもの』って教えてくれてるかのようなというか、『役者』と『タレント』の差っていうか…まあ、それほどに違いました。 ロミオ達なんてひょろひょろでちょっと突かれただけで転びそうっすよ〜。(><)
マキューシオもペラペラ…身体を出すならもっと鍛えてきて欲しいところです。 演技は悪くないんだけど、体力なのか肺活量が影響するのかブレスの取り方があまり巧くなくてそのせいで長台詞が所々鬱陶しく感じました。 …先生、若い力に投資するならちゃんとそういうところまで面倒見てあげてください。他の劇団で育った人を掻っ攫ってきて、それを盗ませたり面倒みてもらおうってのはよくないよ。ちゃんと細かなところまでチェックしてあげなきゃいいものは出来ないんじゃないですかー?
…っていうカンジで。 後のキャストはベテランの方ばかりで安心して観れるのにな。 でも、それって主役がへたれだからベテランで脇を固めるしかないってことですか〜?
だから、私は『千秋楽』のチケットを取ったはずだったのに、あんなに『中日のマチネー』のようなだれ具合だったんですか?
カーテンコールではアンコールがあってスタンディングオベーションもされて、蜷川さんもニコニコと舞台に上がってましたが、私的にはスタンディングをするような舞台ではなし! …とばっさり。
しかし、付け加えておくと私が座っていた周辺は『藤原竜也を観に来た客』であり、『ロミオとジュリエットを観に来た客』ではない。 そして、彼女に引っ張ってこられたと思しき男性もスタンディングオベーションをしてたのは周囲が皆、立ってしまったからつられて場の雰囲気に倣って…という感じ。 まあ、あの生温い熱の中でスタンディングをしてなかったのは私達くらいのものでしたが。 いくら老獪な巨匠と言われていても、評価は甘やかしちゃいかん。 そういうことして年寄りを甘やかすから、日本という国は耄碌爺ィが跋扈するのです(笑)。 多分、主役のキャストが逆だったら…こういう毒吐きしてないで『ブラボー蜷川先生〜♪』とか言いながら、シートの上に立ち上がるほど愛が溢れていたんでしょうけど(笑)。 いや〜、そういう意味では本当に残念だったなぁ。
そして、夜の部で『SHIROH』…本当は観に行くつもりじゃなかったんです。 あらすじを見て、天草四郎という題材にはちょっと惹かれたけど、歴史ものという訳ではない、その何やらファンタジーめいた内容に『?』でした。 そして、某キャラメル色になりきれていない方が歌えるとは思わなくて(笑)滑って転んでるかもしれないとか…ファンに知られたらボコられそうなことを思ってたのもあったし、はずれというかB級娯楽かもしれないという危惧ももっていました。
でも、どうしても気になって…。 何か目には見えない、訳のわからないパワーが働いていたとしか思えない。<よくあることです(頻繁にあっては困るが…)
しかも、この日のもう1本が『当たり外れの大きな蜷川さん』だから保険の意味もあったというか…新感線は以前に1回だけ観に行ったことがあって、その時の衝撃の強さを忘れていなかったというか…とんでもない個性の人ばかりだから面白そうだと思ったというか…まあ、一番の理由は衝動です。 Passionともいいます。(苦笑) だから、チケットを取ったのも今回もまたかなり遅くて、全然いいお席が残っていなかったので1階席後方の端っこになるよりは天井桟敷の天辺でもセンターで観劇しましたが、その判断は正解だったようです。 後ろ…というか、天辺でもよく見渡せました。 ロックミュージカルと銘打たれていただけあって、照明が派手で、もろに目に入ってくると痛いほどでしたが。
内容は…面白かったです。 予備知識はなくとも楽しいってのはいいですね。 歴史的には所々拳を握ってましたが。 歴史物という意義は全くないし、もういい歳になっている上川さんが16歳で死んだはずの天草四郎ってことにはどうしても『……(▼▼メ)……』というリアクションをしてしまいますが、エンターテイメントという点では楽しかったです。 でも、やはりその痛快さにB級とはつけないけれど、呼ぶに相応しい語感は『娯楽』なのか。
あっきー(呼ぶときはカタカナニュアンスになるけど、字面はひらがなのが可愛い。そして少しでも検索避けになりますように…)と上川さん…あれだけ歳も個性も違う人が錯綜して伝えられてたというには無理があります。 せめて、もう少し若いあっきーと似たイメージの人にやって欲しかった。<キャラ的にあっきーは変更不可で あっきーは『Mozart!』の時は鼻の高さが気になって公演は観に行かず(笑)大千秋楽で歌を聴いただけでしたし、しかもその時のPOPSな歌い方なのが気になったけど、『キャンディード』でも歌は成長していても演技が小さくまとまりすぎてるのが気になったけど…まあ、観るたびに舞台に慣れて成長の度合いは感じられると思うので、むしろこれからが何処まで伸びるかが楽しみなのかも。 ただ、あっきーはもっと鼻が…だったらと思うのに惜しいよねって思います。 …誰が言ってたのかな…『鼻は重要なファクターです』って。 だからといっていきなり整形されてたらショックだと思うけど(笑)。
そして思ったとおりもう一人のSHIROH…キャラメル色になりきれていないあの方は喋れるけれど、それで女の人を引っ掛けられるほどだけど………あまり歌えない人だった。
しかし、キャラメルにいる時よりもその立ち居振舞い、キャラクターには違和感なし。
…周囲のアクが強いから。(^^;
キャラメル公演だとどうしても周囲の人を差し置いて一人だけフロントに出ようとするのが目立つが、このカンパニーはそんな人ばっかり(笑)。 皆がそれぞれにフロントに出よう出ようとしているので全然気になりません。 …むしろ、どうせ皆がフロントに出ようとするのだから、もっとあっきーや洋平君にフロントに出てきて欲しい。<若いかわいい男の子は潤いです。
色々なところの人がミックスされているからしょうがないのか…新感線の舞台というには少し毒が薄まっている感はありましたが(笑)、相変わらずソウルフルでそのパワーは健在でした。 かっちりまとまった舞台ではないけれど、だからこそ個性が生かされていて面白いのかも。 でも、観ないまでも新感線の動向は時々チェックしていたというか、アクが強いところだからイヤでも耳に入ってきた…って感じだったんですが、ロックミュージカルとはいえ、漸くのミュージカルなんですね。 発声も立ち居振舞いもなってないような…歌えない、踊れない、喋れない、芝居ができないどころか満足に歩くことも出来やしないアイドルの舞台にミュージカルという冠がくっつけられるのなら、新感線の方が余程ミュージカルと呼ぶに足ると思うのです。 もっと前から堂々とミュージカルを名乗っていてもよかったと思うのですが。 でも、これを機に今後もっとミュージカルを謳ってくれればいいなと思います。 …だって、日本はまだまだミュージカルの肩身が狭い、芸術音痴の国だから。
帝劇の舞台は広くて、国産のオリジナルミュージカルを上演した際にはその舞台が広くて、空間が余っているように感じられることが多いのですが、これは舞台の大きさと作品のスケールがマッチしていると思いました。 美術もすごかったですし、舞台にいくつものモニター…というか、TVのがわかりやすいかな…が置いてあってそれに現代の街や戦争やいろいろな画面が映し出されたり、文字が流れたりするのも非常にメッセージ性があって面白かったです。
チラシやプログラムに使われていたモチーフのギターもロビーに置かれていましたが、幕間や終演後は人だかりがすごかったです。 それに見合うだけの精巧な作りでしたので、納得はできますが。 皆さん、携帯電話で一生懸命にパシャパシャと写してましたが…私はそこに近づくまでの根性も持ち合わせてはおらず、尚且つ新しく変えた携帯はやはりあまり綺麗な画像ではないので写してきませんでした。 …でも、この観劇後に銀粘土をはじめたのでモチーフの参考に写してくればよかったかも…。(><)
本当に退屈知らずで面白い舞台だったので、ぜひともまた再演して欲しいですが…しかし、再演の際には伊豆守様のお歌をどうにかしてあげてください。(TT)<切実
ええ、この人の前にはまだキャラメル色のあの方も爽やかな歌声に聞こえましたとも。
演技はそれなりで、いかにも腹黒い悪代官然とした様は役柄にぴったりでいい味をだしていたと思うのですが、でもお歌が〜…お歌が〜…(T△T) CDを流しているかのような歌い方よりは好感が持てますが、あれだけ芸達者な人達がいるとどうしてももうちょっとこう…一味加えて欲しいと思います。 壊滅的に音痴な訳ではないのが救いですが、せめて一本調子な音程を何とか…してくれたら…。 やはり、ミュージカルはPOPSでもなんでもいいから、最低限歌える人が出演してくれなくては…。(――;
あと、このミュージカルは度肝を抜かれることが多かったのですが、バンドの方にも驚きました。
某悪魔だった人が混じっている!(笑) かなり最初の方で音は以前にどこかで聴いたような気はする…と思ってはいたけれど、顔を見ても全然まったくさっぱり、わかりませんでした。以前のあの悪魔顔しか知らないので。
…アーティストなのにむちゃくちゃ地味? 以前のインパクトを差し引いても、その辺で一般人に埋没してそうです…。 あの顔にしていた理由がわかりました……。
まあ、それはいいとしてこの日は前楽だったのですが、マチネーの舞台よりも私の中では盛り上がっていて、会場の熱気もかなり大きかったのでどちらが千秋楽だったのかわかりません!
物語の進行中はイマイチどこかかみ合っていない部分があると思っていたあっきーと上川さんでしたが、ぴょーんと飛び上がって客席の後ろの方まで届くような投げキッスをするあっきーと、会場の女性客は皆俺のファン、そうはさせるものかとそのキッスを奪う上川さん…惜しいな、最後まで噛みあってません。 上川さんが邪魔するちょっと前にキッスは飛んでいったのでタイミング的に掴めてませんでした。 でも、最後はその邪魔した投げキッスを自分の口に放り込む仕草をしてらしたので…あっきーのキッスが欲しかったんですか?(笑)なんてことも思ったり。 最後まで楽しませてくれました。 あとはお歌をもうちょっと頑張ってくださいね〜!
そして、この日の観劇でどちらがより楽しかったかと聞かれれば…こっち。(^^;
私は根が庶民なので、巨匠の芸術よりも庶民の娯楽を愛してるんですー! 今年最後の観劇は充分満足のいくものだったのでそういう面でもいい年だったな…と思います。
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