uchie◎BASSMAN’s life
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2005年07月08日(金) ■ |
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■ロンドン2日目 |
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ヒースロー空港で足留めを食らったザ・フリークは宿に連絡し、車で迎えに来てもらうことにした。 マシンガンを抱えた警官が数名警備に来ていて、厳戒体勢にあるのがリアルになってきた。 初めてそんな銃器を間近で見て恐怖を感じた。 1時間ほどかかり宿の人が到着し、僕らの荷物を見るなり、 そんなにたくさん車に乗せられないよ、と言った。 テロのことで彼も随分冷静さを失っている。 結局タクシーを使うことになった。ロンドンのタクシーは日本のと違い、車内が広く、なんとかスーツケース3つと機材を全部乗せることが出来た。 問題は料金だ。夜間だから割増だ。 宿に着くまでに料金表示はすごい勢いで廻りだし、63ポンド(1ポンド約200円)かかってしまった。場所はクラッパム・コモン。中心地から少し離れた静かなところ。 それでも無事宿に着き、その周辺全てがレンガ造りであるのを見て、ここはロンドンなのだという実感がやっと沸いた。 借りたのは3人部屋だ。8畳ぐらいの部屋にベッドが3つ。機材とスーツケースを置くともう部屋はいっぱいだった。シャワーとトイレは共同で2基ずつ。日本語OSのPCでネットも出来て、悪くない。 日本からたくさんの安否のメールをもらった。メールチェックなどを済ませ、ベッドに着いたのは午前3時頃だった。 翌日、意外にも早く起きれた。涼しくて気持ちのいい朝だ。窓からレンガ造りのアパートがいくつも見え、乾いた空気が入ってきた。みんなシャワーを浴びてから食事に出かけた。 労働者が寄るような、イングリッシュ・ブレイクファーストが食べられる店に入り、セットメニューを頼んだ。 小さな漁船の船長でもやってそうな髭をたくわえたおじいさんがのんびりと作るビーンズとソーセージとベーコンと紅茶で3.80ポンド。日本ではまず食べることの出来ない味だ。イギリスといえばやはり紅茶。イギリスの水でなければ、またこの味も出ない。 高級な朝食ではないが、こういうのは嫌いではない。 周りの客が広げている新聞を見ると、昨日のテロの写真が1面に出ていた。バスの屋根が吹き飛んでいる。死者は50人。 なにが起きたのかだんだん分かって来た。 食事を済ませると、バスでロンドンの中心地へ向かった。初めて乗る2階建てのバスだ。遊園地で遊ぶ子供のようにはしゃいでしまう気分。
あちこちでサイレンが鳴り、パトカーを通りで何台も見かけた。物騒な感じだ。 しかしピカデリーサーカス周辺はどこもセール中で、随分ひとがいて混んでいた。街は生きている。そして人々の生活は続いている。街のあちこちを歩いて安全を確認した。
しかしまだいくつか確認しなければならないことがあった。 日本からEMSで郵送したエフェクターなどの機材がまだ届いていなかったのだ。もうとっくに届いていてもいいころなのに。 心配だったので郵便局へ行って訊ねてみた。 しかし全く相手をしてもらえなかった。イギリスは郵便事情が良くないと聞いていたが、本当だ。 困惑しているところへ、ネットでの記事を掲載してくれていたUKジャック紙のスタッフが協力してくれた。 この非常事態で彼らも忙しいのに、いろんなところに電話をして調べてくれた。20分ぐらいは仕事を止めて費やしてくれた。この恩は忘れることは出来ない。 テロの影響で、空港から入った郵便物は全てストップしてしまっているそうなのだ。もう明日のライブに間に合わないのを覚悟しなければならなかった。最悪二度と手元に戻って来ないかもしれないのだ。僕のだけでも8万円相当のものだった。 そのあと急いで明日出演予定のMETROの事務所へ向かった。社長のポールはThe Weekendersのボーカリストでもあった。 体格が良く、握手のときの握力はかなりのものだった。 このテロ騒ぎの中、明日ライブが出来るのか相談しなければならなかった。昨日と今日は営業を停止していたのだ。 結果はYesだった。店長としてビジネスに厳しい面もあるが、ロッカーらしい熱さのある男だ。 とりあえずホっとした。もしライブがやれなければ今までの苦労は全て無駄に終るし、もう一度やって来る予算など我々にはなかった。 しかしまだ問題が。 東京のライブハウスと違い、バンドがアンプやドラムセットを用意するというのがこっちでは常識になってるのだ。もちろんそこまで機材を日本から用意するとなったら輸送費だけでも大変な金額だろう。 ギターアンプは対バンから、ベースアンプはレンタル、ドラムはバスとタムを対バンから、他をレンタルすることになった。全てで60ポンドだったかな。出費がかさんでいく。
ミーティングの後はスタジオでリハーサルの予定があった。 急いで宿に戻り楽器を担いで、スタジオへ向かった。かつて日本のギターウルフも使用したというスタジオだ。 部屋に入って微妙に勝手が違うことに気付いた。どの機材も電源が入らないと思ったら、ドアの上にメインのスイッチがあって、それをオンにしないと他が入らない仕組みになっていた。もちろん持ちこみのエフェクターなどはそのままでは使えない。ロンドンは240Vなので変圧器を持っていっていた。 慣れないスタジオに少し戸惑ったが、演奏が始まるとここがロンドンだろうとどこだろうと関係なく、いつもの自分達の世界になるというバンドの力に気づいた。 他の地元のバンドの練習の音が聞こえたが、全く負ける気はしなかった。 リハが終って表に出ると、今回特に協力してくれてスタジオの予約まで取ってくれた地元に住んでるMさんが待っていてくれた。彼女はとてもロック好きなひとだ。 僕らはそのまま一緒に飲みに行った。ピザなども頼んで軽く食事もした。いろいろ話をし、ビール2杯で僕はいい気分になってしまった。
その後、明日自分達が演奏する会場、MetroでCLUBがあるので宣伝がてらに遊びに行った。CLUB好きな僕にはたまらない。 テロの影響でここロンドンの中心地では普段に比べれば随分ひとが少ないそうだが、それでも十分じゃないかなって思えるぐらい人が集まっていた。ロンドンの人はタフなんだ。 英語ほとんど話せないけど勇気を出して話しかけてみると、聞いてくれるひとはたくさんいた。 中でもルークというやつと仲良くなって、ワインを少し飲ませてくれた。 「キミはフォトジェニックだね!一緒に写真撮ろうよ!」 と言われて、肩を組んで何枚か彼のデジカメで写真を撮った。 ロンドンではJAPとか言われて冷たくされるんじゃないかと心配もあったが、全くそんなことはない。彼はファミリー(たぶん兄弟とか従姉妹)と来ていて、一緒にいたショーンもいい感じの男だった。 東京のCLUBでフライヤーを撒いたりすると、しばらくすればほとんど床に落ちていたりするもんだが、みんな快く受け取ってくれたようだ。
1時頃バスに乗って再び宿へ戻った。 長い一日だった。いよいよ明日はライブである。
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