朝のラジオで、どこかの市民劇団が「なめとこ山の熊」を上演する、というのんびりしたローカルニュース。
アナウンサー曰く、「生活のために熊をとって暮らしている猟師が、最後には熊に殺されてしまうという悲しい物語です」。
ひどい解説である。矮小解釈もいいところである。 小さなニュースだといって見逃すわけにはいかない。 熊に殺される?!悲しい物語!?
最近のNHKラジオの若いアナウンサーには、言いたい文句が山ほどあるが、 総合すると、勉強不足で短絡的である。 限られた時間で表現しなければならないことは承知だが、魂が抜けている。
一種の義憤のようなものにかられて、言葉にできない。 悔しさのあまり、件の物語を読み直した。
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でもまあ、仕方のないことかもしれない。 これは、鷲谷いづみ東京大学教授の、「万葉集にうたわれた精神世界を、現代人はもう理解することができない」という嘆きにも通じるだろう。
自然との関わりを失い、人はほとんどすべて都市生活者となった今、人間の自然観や精神世界だけは変わらないということはないのだ。 野生動物と人間との命と命をかけたやりとりなど、理解できる由もない。
でも私は−自分の豊かさと幸福のために−、宮沢賢治の物語世界ぐらいは、たとえ想像の範囲かもしれないけれど、共感できるようでいたい。
2006年12月11日(月) 不足 2005年12月11日(日) 女の子は大人より賢い
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