月と散歩   )   
DiaryINDEXpastwill


2003年07月12日(土) 『戦え!野良犬』



6月。

―――

やっと馴染んできた原籍の職場を、
『応援』というカタチでまた離れる。

とりあえず9月一杯の予定だけど
課長いわく、
「期間の延長もありえるから」

彼らが「ありえる」というときは、実はすでに『決定事項』なんだ。

僕ら現場に話が下りてくるときは、もう僕らではどうしようもなくなってから。

そういうふうで、組織ってのは円滑に動く。
5年いて、そう学んだ。

―――

新しい職場は、戦闘機の整備をするところ。

3年前、同じような状況で 似たような職場に応援に行っていたし
僕はもともとその関係の学校出身なので
『むしり取った衣笠』ってヤツだ(違う)。

扱うのは、『F-4 ファントム-II』って機体。

車に車検があるように、戦闘機にも3年に一度、定期点検がある。

ロケットは一発勝負だけど、飛行機は点検を受けて何十年も使う。
このファントムという機体も、初号機が飛んだのはもう30年ほど昔だそうな。
もちろん部品の交換や改修を受けてきているので、30年前そのままで飛んでいるわけじゃないけど。


定期修理で入ってきた機体を、バラして、清掃して、必要とあらば部品を交換して、組み立てて、色ぬって、機能を確認して送り出す。

そういう仕事です。

―――

初めての職場。
『応援者』という立場。
先への不安。
プライベートでの いろいろ。

そんなのが重なったのか、この頃から原因不明の下痢に悩まされる。

また。

眠れない夜。

―――

一週間を過ぎ、だいぶ仕事には慣れてきた。

僕の仕事は、組み立て直された機体にエンジンを載せて試験をして調整をすること。

ロケットがおよそ半年に1機のペースで造っていたのに対して、
戦闘機は2週間に1機のペースで機体が出て行く。

ロケットは機体の品質管理上、空調完備のなかでの作業だったけど
いまの工場は扇風機が数台あるだけ。
外での作業も多い。
それに加えて内容のほとんどが力仕事。

なかなか身体が慣れてくれず、一日終わればもうヘトヘト。
寮に帰って寝るだけ。


時間の流れが、おそろしく早い。

―――

やりたい事と、やらなきゃならない事。

それらを『ふるい』にかけて、最低限できることをなんとかこなす日々。
出来なかったことが、また重く圧し掛かる。

下痢、2週間目 突入。

―――

まるで入社当時に戻ったみたいな精神状態。

…いや。
ぐるっと廻ってもとの場所のようでも、それはきっと らせん階段の上と下。
登っているはずさ。

と、自分を奮い立たせたり、立たなかったり(苦笑)。

―――

気付けば6月も終わり。

僕がエンジンを積んだ機体は4機になっていた。


一度、血便(!)らしきモノを確認するも、それ以上悪くなることもなく
アレはきっと切れただけなんだ(どこが?)、と自分を納得させる。

…なんか、汚い話でスンマセン(苦笑)。


帰ってきてすぐに寝てしまう生活が板に付いてしまい、
3度の食事が1度に減る。
こりゃ、不健康はロッカーの基本 なんて言ってる場合じゃあないナ。

―――


  キミは戦えと アタシに言うけど


―――


夏が、すぐそこで足踏みをしている。



                               『戦え!野良犬』 by アナム&マキ


りべっとまん |MAILHomePage