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2025年02月24日(月) ■ |
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『オバケ東京のためのインデックス 東アジア編』 |
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佐藤朋子『オバケ東京のためのインデックス 東アジア編』@みなとコモンズ+α
シアターコモンズ25始まりました、まずは佐藤朋子『オバケ東京のためのインデックス 東アジア編』。東京湾に現れたゴジラとクジラと共に、今の東京に残る朝鮮、満州、台湾、琉球王国、蝦夷地の痕跡を辿る。慶應義塾大学、紅葉山、東京プリンスホテル、芝公園。
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Feb 24, 2025 at 17:47
シアターコモンズの季節です。まずはレクチャーパフォーマンス+ウォークの今作。
・佐藤朋子『オバケ東京のためのインデックス 東アジア編』┃シアターコモンズ'25 岡本太郎による「オバケ都市論」を起点に、これまでにゴジラ、カラス、生け花等の「非人間」の視点を通して、都市の「オバケ」的な記憶を浮かび上がらせ、もうひとつの東京を構想する 4作目となる今回は、東京に残る植民地時代の東アジアの僅かな痕跡から東京を捉え直す
2021年からのシリーズもの。途中からの参加でついていけるかなーと不安ではあったのだが、「植民地時代の東アジアの痕跡」という文言に惹かれた。韓国映画を熱心に観るようになってから、遅ればせ乍ら興味を持っている分野。しかも今回は、実際に街に出てその痕跡を辿る「ウォーク」が実施されるという。これは! とチケットを確保。
田町にあるみなとコモンズに集合、まず地下1Fのスペースでレクチャーパフォーマンスを拝見。資料映像とともに、佐藤さんの講義を聴く。室内は暖かく、客席にはちゃんと椅子も用意されているけれど、コートもマフラーも脱がずに座っているひとが多い。このあと外に出るのが分かってるもんね。30分程の講義のあと、配布されたマップを手に街へと繰り出す。
さて、ここからが個人的にヤベーところ。「ウォーク」はスマホでポッドキャストを聴き乍ら各々コースを辿るというもの。スマホどころか携帯不携帯! 無理! しかしシアターコモンズはどんな参加者にも門戸を開いている。公演前にきちんと「デバイスで音声を聞いて参加されるのが難しい方は、音声内容を紙でお渡ししますのでスタッフにお申し付けください。」というメールが届いていたのだった。という訳で私だけが紙を持って出発。他にはいなかったっぽい…というか初日開いて初めてのケースだったのかもしれん……訊ねたスタッフさん戸惑ってたもんな。いやはやご配慮有難うございます。ちなみにレクチャーにもちゃんと日英字幕用モニターが用意されていた。聴こえないひとも安心よ!
皆一緒に出発するが、自分のペースで歩くのと信号待ちで分断されるなどしてだんだんひとり散歩の様相に。レクチャーされたもの以外にもあちこちに記念碑がある。ウォーク終了後にペルリ(ペリー)提督の像迄見つけてしまった(日本開国のきっかけなので、本編に関係ないようで実は繋がってるかも?)。
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Feb 24, 2025 at 17:48
イヤフォンで、或いはヴォリュームを上げたスピーカーでポッドキャストを聴き乍ら歩くひとたちに混ざって歩く。親子連れも何組かいて、「桜が咲いてる!」(もう咲いてるところがあったのよ)と子どもの声が聴こえる。
序盤はそれこそガイドについていく(佐藤さんが先頭を歩いていたらしい。見えてない)団体客の装いだったが、立ち止まって建物に見入るひと、写真を撮るひととそれぞれ好きに動くので程なくバラバラに。まっすぐのコースなので迷うことはないだろうと紙を読み乍ら歩いていたが、後半歩道橋を渡る際降りる箇所を間違えそうになった。向こう岸にそれっぽいひとを見つけなかったらそのまま反対方向に行っていたところだった(笑)。
それにしても……併合という名の実際は侵略の歴史なのだ、これは。ああ、こういう感じで日本は東アジアの国々を囲い込んだんだなあというか、よくいうよというか、どの口がいうかというか。現在のウクライナやパレスチナのこと、プーチンやネタニヤフ、そしてトランプの物言いを連想せずにはいられない。時代とはいえ土人という名称が平気で出てくるし、入植者の嫁養成学校についての記録もあるのだ。蝦夷地や琉球王国の扱いにしても、地方(てか九州)出身者としてはイヤ〜な気持ちになるどころか恐怖すら覚える。父は台湾からの引揚者だった。生前は楽しかった思い出だけを話した。帰国の際、食料と一緒に高価な食器を持たせてくれた方もいたそうだ。考えてみれば、父が引き揚げの際命を落としていたら、私も生まれていない。
講義で紹介された、残されていない記録について考える。それは意図的に抹消された不都合な真実なのか、或いは記録に残す迄もないと軽んじられた事柄なのか。その背景には、記録に残す術さえなかった数多の個人史がある。証言者は減っていく。実際、併合の過程を目の当たりにしていたひとはもう誰もいない。
悶々と思いは巡る。快晴の空は、そんなときでも綺麗に拡がっている。
会期中なのでネタバレ避けつつ、撮った画像など載せておきます。本編で紹介されなかったものも混ざっています。そうそう、スレッド最初の東京タワーの画像、実は飛行機も写ってるんですよ。
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Feb 24, 2025 at 17:49
レクチャーにもウォーク解説にも飛行機と鴉が登場する。街を歩くとどちらにもちゃんと遭遇。
こちらではネタバレ気にせず画像の説明を。1枚目は本編には登場しない。 --- 1枚目:昭和十五年に東京市が設置したらしい、ここは昭和十三年九月一日暴風により甚大なる被害を受けた公園だという説明 2枚目:東京大空襲で炭化した箇所のある戦災銀杏 3枚目:芝公園の鴉。全然ひとを避けない! 近い! 4枚目:北海道大学の前身、開拓使仮学校跡。北海道に移設することを想定し、学校名に「仮」と入れた。女学校が併設され、卒業後は北海道在住者と結婚することを誓わせた、と記されている。附属の「北海道土人教育所」のこと、そこへ38名のアイヌが東京に送られ、慣れない気候風土などが原因で死者も出たことは書かれていない ---
音声はアーカイヴがあり、上演が終わったあとも個人で使えるようになっていた。当日歩けなかったひとは、配布されたQRコードから音声ファイルを呼び出して追体験が出来る。
ちなみに講義には旧李王家東京邸のことも出てきた。数年前、アフタヌーンティーで行ったところだった。
・旧李王家東京邸┃千代田区文化財サイト どこから見ても絵になる現赤坂プリンスクラシックハウス。(中略)韓国併合時に設立された李王家の東京邸として、1930年(昭和5年)建てられたのが、現存する建物です。 それだけ聞くと、華やかで幸福な生活が営まれていたかの如く素晴らしい時を感じさせる場とも思われます。しかし、(中略)李王家も後に王族の身分を失うという悲劇の歴史が繰り広げられた場でもありました。
戦後身分を失い借金を背負った李垠(イ・ウン)とその妻方子が韓国へ帰れたのは1963年だったとのこと。当時は歴史も知らず、素敵なクラシックハウスだわ〜とかいって優雅にお茶したもんだが、今となっては後ろめたい。いくつになっても知識は得られる。知らないままでいなくてよかった。
佐藤さんは一昨年ポーラ美術振興財団在外研修員として台湾と韓国に滞在していたそうだ。その際「植民地時代の東アジア」についてリサーチしたのだと思われる。それ以前の『オバケ東京のためのインデックス』とはまた違った趣だったのかもしれない。気が早いが、次回があればまた参加したい。
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