2008年10月13日(月)
萌え。2
明ちゃんが大好きだ。弘美君も大好きだ。 でも弘美君をいじめるのも好きなんだ。すまん弘美君。その分明ちゃんとラブラブにするから許してネ。
「慣れているので大丈夫です。あ、僕の名前は」 「谷塚(たにつか)弘美(ひろみ)君、だろ?」 さらりと言った明の言葉に、弘美は固まった。 自分は身一つで逃げ出して来たはずだ。名前がわかるものなど何一つ持たずに。 凝視する弘美に明はゆったりと笑う。 「そう警戒しないで。危害を加えるつもりはないよ。少し離れたところで人を探して騒いでるみたいだったから、ちょっと調べてさせてもらった。亡くなったご両親の借金を返すのに男相手に身体売らされそうになって逃げたんだってね」 ますます強張る弘美を明は静かに観察する。 車の窓から外を眺めていたら、何かが倒れるのが見えた。ちょうど人の大きさのものが。なんとなく気になって車を止めさせて戻ってみるとやはり人で、しかもかなりの美少女。揺すっても軽く頬を叩いても目を覚まさず、汗だくの様子と通りの向こうから聞こえる怒鳴り声にただ事ではないとわかる。そのまま置き去りにしてもよかったが、あまりに辛そうな表情が憐れで家に連れ帰った。 抱えた時に見た目より筋肉質だなとは気付いたが、汗で濡れた服を着替えさせようとしたら男だったから驚いた。この美少女顔で、男。着痩せするらしく無駄無く引き締まった肉体は素晴らしい筋肉美で、これはすごいと明は素直に感嘆した。 電話しておいた医者が到着して診察している間、報告させた内容に明は耳を疑うと同時にどこか納得し、この青年に興味を覚えた。 明が医者を見送り部屋に戻ると、弘美は目を覚ましていた。口を開いて出てきたのは、容姿に相応しい可愛らしい少女の声。言われてみれば少し高い男の声とも取れなかったが、何も知らずに聞けば誰もが女の声と思うだろう。 「僕を、どうするつもりですか」 美少女の顔と声で僅かに身じろぎする弘美に明は笑みを深くする。布団に脚が隠れていても明にはわかる。いつでも布団を跳ね除けて飛び出せる体勢に変えたのだ。面白い。 「さっきも言ったけど、危害を加えるつもりはない。行き倒れを助けただけだよ。弘美君はどうしたい? 捕まって身売りさせられたい?」 「嫌です!」 弘美は途端に鳥肌を立てて青くなった。正直な即答に明は目を丸くし、弘美は明の表情を見て今度は恥じらいに顔を赤らめる。自分から警戒していた相手にこんな馬鹿正直に答えてしまうとは。それがまた正直で、明は吹き出した。 「はは、そりゃそうだ。ごめん。まぁうちにいる間は安全だから、安心して」
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