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2025年01月18日(土) ■ |
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ヌトミック『何時までも果てしなく続く冒険』 |
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ヌトミック『何時までも果てしなく続く冒険』@吉祥寺シアター
そうだったの? そうじゃなかったんだ、という死者との対話。能ともいえる構造のなか、演者と演奏者がポリメトリックのリズムで記憶を辿る。幕切れには鳥肌たった! ヌトミック『何時までも果てしなく続く冒険』
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せつない思い出話か、羅生門みたいな話でもあるな……と思って観ていると、過去と現在が融け合っていく。死者が増えていく。あれ、このひとも亡くなっているの? ぬるりと通気口に吸い込まれていく彼らを見送る。では、最後の彼女もひょっとして。この場所に、生者はひとりもいないのではないか……そう思わせる幕切れ。
『バッコスの信女』の音楽にインパクトを受け、この額田大志って方主宰のヌトミック、観たい! と思って早4年。この間バスツアーや船ツアー(公演履歴を調べてみたが見つからない。何を船と思ったのか自分)とかはあったんだけど、今の体調では上演中にぶっ倒れたりしそう…ダメじゃん……と自粛してた。のりもの酔いがトリガーになるんだよなー。普段の移動なら途中で降りればいいけど、上演に付随する移動となると、降りますイコール上演中断になってしまう。ダメじゃん。その他の公演もなかなかスケジュールが合わず……という訳でようやくの鑑賞。うれしい。劇場公演は久しぶりだそうです。
ほぼ裸舞台。あちこちに通気口のようなダクトホース。上手にドラム、下手にギターとシンセサイザー。舞台後方に横長の窓があり、歩いていくひとの脚が見える。半地下は、生き乍らにして死者と出会える境目か。現在と過去、此岸と彼岸。
11年前、歌舞伎町で亡くなった女性の思い出を語るホスト、そして幼馴染。ホストの客と女性の姉も現れ、彼女はどんな人物だったかを形作っていく。ビルから飛び降りる前の彼女は何をしていたか、彼女と何を話したか。ところが、その回想に亡くなっている女性が参加してくる。生者の証言と死者の主張には相違がある。女性の友人であるもうひとりの死者も現れ、「今、ここ」はいったいどの世界なのかが曖昧になっていく。そのうちホストは今はホストではないこと、そして彼も亡くなっていることが判明する。ホストの客は今ではなく過去のことを語っていたのか……ということは、ホストの客は今どちら側にいる? ダクトホースに呑まれるように退場していくホストの客、その様相にぞくりとする。静かな幕切れなのに、インパクトは絶大だった。ホラーのよう……いや、怪談か? 「どっとはらい」と心のなかで呟く。
“何時までも果てしなく続く冒険”とは、そして帰り際渡されたステッカー(後述画像)に記された“今、から冒険 がはじまる”とは。登場人物たちを友人のように思う。あの子はどうして、あの子は今頃。想像を巡らせ帰路につく観客の冒険は、たった今、これからはじまるのだ。衝撃の余韻は長い。
ラップのような台詞。その台詞と融和、或いは鍔迫り合いをする生演奏。変拍子が多用される。5で割ったり、7で割ったり。グルーヴが生まれる。出演者は長沼航さん以外初見だったのだが、ソプラノ歌手、トラックメイカーと、音楽畑からの参加も多いようだ。詠い、或いは唄い、言葉を紡ぐ。「私の名前は真阿子、真は真実の真、阿は阿修羅の阿」といったパンチラインも繰り出される(ふいうちで笑ってしまった)。ひとつのミスで全てが崩壊してしまいそうな緻密さを持ちつつ、演者(話者)のコンディションにより演奏者が演奏を変えるという意味ではインプロの要素もある。
ヌトミックという劇団の由来は「リトミック+額田の“ぬ”」なのだそうだ。音楽と身体を連動させる。劇場以外での上演も多いことから、観ている間維新派のことを連想していた。アフタートークでは額田さんが「まず台本(台詞)を書いてから、エクセルで譜割をつくる」と話していた。上演作品は演者による「合奏」でもある訳だ。松本雄吉おっちゃんに、変種の子孫かもよと知らせたくなった。
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やっとヌトミック観られるう! という想いだけで事前情報入れてなくて、ドラムがエラいウマいなすげーなーと思って終演後パンフ見たらceroのメンバーともコラボってる方だった。アフタートークにいとうせいこうさんが来て(これも知らずに…ラッキー)面白い話が聞けた(退場時ステッカー貰えた)
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Jan 18, 2025 at 21:11
せいこうさんが「(上演された作品は)1“曲”ですね」といってて深く頷いた。能の話も出た。「死者の声を聴く」という『想像ラジオ』との共通点も。何度も「話したいことあったのに忘れちゃった」「あっ、今いおうとしてたこと忘れちゃった」としどろもどろの額田さん、緊張していたのかな。「(針の穴を通すような演奏を)今日2回(マチソワ)やるんでしょう? そりゃ忘れますよ」とせいこうさん。疲れますよね
そうそう、吉祥寺シアターだったので名物武蔵野市仕様(名物)のMONOのチラシもらいました😊
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Jan 18, 2025 at 20:59
おまけ、名物(復唱)。ヌトミックもつくってもらってました(にっこり)
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