痛い。 - 2006年06月20日(火) 何となく、 今日あたりにこんな結果が待っているような気がしていたのだけど。 お別れはいつも突然やってくるから、 心の準備をしている余裕を与えてはもらえなかくて。 朝病棟に足を踏み入れた瞬間に感じた違和感は、たぶんしばらく残るだろう。 部屋が片付いて、電気が消えているのを見た瞬間、 身体が硬直したのは、ある意味自分なりの防御反応だったのかもしれない。 そういう現実を理解するのには、やっぱりどうしたって時間が必要で。 拒絶と受容の感情に同時に引っ張られて、 その反動でぶつかり合って相殺するような、 そんな良く解らない気持ちが胸の内側に拡がっていた。 すとん、と堕ちていく想いは、 ほんの数日前に聴いた家族の話を思い出したからだ。 ライオンズクラブで海外旅行に行った話。 5年前には、ウィーンで暮らす娘の所で過ごしていたこと。 家族で温泉旅行に行った話。 それはいつも彼女が企画して、先頭に立っていたのだと、 嬉しそうに話すご家族の顔を、覚えてる。 前の病院では痛みがひどくて、看ている家族も辛かったと呟いたご主人の横顔。 自分の無力さを感じていたのだと、そっと打ち明けてくれた時の切ない眼差し。 傷口が綺麗になってきたな、と呼び掛ける柔らかな声。 そういうことが、まだ鮮明に記憶に残っている。 新しい高齢者向けの住宅に引っ越して、 庭付きの新築でご主人と仲良く暮らしていく予定だったのを、あたしは知っている。 その家を気に入って、購入を決めたのが彼女だったのを、あたしは知っている。 だからあんなにも家に帰りたがっていたのだと、あたしは知っている。 初めてその新しい家に帰るのに、本人から感想が聴けないのが、 痛いくらい切ないと想った。 いろんな話を聴きながら、彼女は何を想っていたのだろう。 少しでも、穏やかな気持ちになる時間があっただろうか? 幸せを感じてくれる瞬間があっただろうか? 考えだしたらきりがなかった。 気持ちを切り替えるつもりで目を閉じて深呼吸する。 それでも、無機質なパソコンの画面に映る丁寧に書かれた最期の記録を読みながら、 彼女の受け持ちだった先輩の顔がまともに見れなかった。 ...
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