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■ 弟の結婚1
ちょっと緊張した顔の弟が、食事も終わり一段楽した席で、私のほうを見ながら言った。
「今年の夏ごろ、結婚するから」
一瞬、場が固まる。 口火を切ったのは母だった。 「まぁ♪ なんてお目出度いんでしょう! もっと早く話してくれたらよかったのに。お母さん、すごく幸せ!!!」 万年少女のような母は、大はしゃぎ。 「そぅか、俺も孫を期待できるか」 一瞬詰まった父も、なんとなく祝福ムード。 昔だったら違う反応だっただろうに、老いたというか相変わらず狡い。
「正月の日程何度も聞くから、多分その手の話だと思って、初対面の人に会っても恥ずかしくない格好してきたんだよ? ・・・で、お相手はどんな方なの?」 「美人でもないし、可愛くもない」 をいをい・・・。自分の彼女を・・・。
「どのくらい、おつきあいしたの?」 「5年くらい」 「結構、長いねぇ」 「「何年何月何日になったら、はっきりさせてくれるの!?」って言われた・・・」 一同爆笑。
「お名前は?」 「×□△」 「漢字は?」 「うーんと・・・、×は××の×、□は□の□、△はうーん・・・○だったか△だったか・・・多分△?」 「5年も付き合った人だっていうのに、満足に名前も覚えてない?」 「多分△だよ、うん、△、△な気がしてきた」 ホントにつきあってるのか???
「ご両親のご出身はどちらなの?」 「××。親戚は全員そっちにいるらしい」 「関西の人なんだ」 「うん、雑煮が違かった。味噌に丸い餅」 「雑煮? 相手のご両親にご挨拶に行ったの?」 「2年くらい前かな? 飯食っただけだよ」 正月に飯食いに行くって、フツーの挨拶じゃないだろが。 しかも、2年も前に挨拶に行っておきながら、こちら側は誰も知らないなんて。
「結婚しても仕事を辞めないことを条件に結婚することにした。結婚後も財布は別」 心なしか自慢げな弟。 まぁ、女性自身が経済的自立を確保したまま結婚することが女性のためであるということを吹き込んだのは、私ではあるが。 「ということは、結婚当初から別居ってこと?」 「うん」 弟は、東北に転勤中で、あと3年は戻ってこない。 「結婚後も、奥さんは自分の実家から勤務先に通うの?」 「うん」 結婚する意味あるの?
「式はどうするの?」 「式はやるけど、結納も披露宴も二次会もやらない」 ま、もう30過ぎてるし、大袈裟にする必要はないが・・・ 「結納金もナシでホントにいいの?」 「うん。いいって言ってた。貯金ないって言ってあるし。ホントは少しは貯めてるけどね!」 女房になる人を騙してどうするんだか。
「式はどこで?」 「××神社(東北)がいいかなとか。自分としてはホントは××(菩提寺。東京では結構名高い)でやりたいんだけど、ネットで調べても出てないんだよねー、結婚式ができるか」 添え物の意見より主役(新婦)の希望に沿っておきなさいって。
「ハネムーンは?」 「仕事忙しいから、行けるかどうか・・・」 行かないと、奥さんに後々まで祟られると思うけどな。
「本籍は?」 「竹島か北方領土のどこかなんかどうかなと思うんだよね」 「え〜、右くさい、ダサイ。そういうのにするなら昭和基地とかにしたら」 だんだん、我が家のいつものペースに戻ってきた。
・・・と、どんなに聞いても、本気で結婚しようと考えているようには思えない会話が続いた。 ただ、両親より私の反応を一番気にしているんだなということは、よくわかった。
どうして、こんな面倒くさい関係になってしまっているんだろうね。 兄弟って「他人のはじまり」なんだって。 切っていいんだよ、無視していいんだよ
2010年01月01日(金)
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