オトナの恋愛考
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ついさっきまでひろと一緒だった。 今月はランチやディナーのおつきあいが多く なんだか胃腸がご馳走疲れしていた気分だったが でもひろとの食事は別腹なのだからお店は吟味して。
いつもと違った雰囲気で小さな京都を想わせる 古い旅館が運営している趣のある古い建物で 旬のお野菜中心な食事ができる 近郊の温泉エリアにあるレストランをチョイスした。
苔むした風情のある門をくぐると そこは建築雑誌にも掲載された古い別荘を利用したエリアだった。 隣にはお寺があって仏舎利塔まで見えてちょっとした京都旅行の気分だった。
ビュッフェでなくひとつひとつ出てきたら 立派な懐石料理になるようなとても品の良い味付けの料理の数々。 最近健康に自信がなくなってきたひろがとても喜んでくれたのも嬉しかった。
その後定宿になってしまった隠れやでいつものように一緒にお風呂に入って愛し合い それからひろが買ってきてくれた千疋屋のハロウィン仕様のケーキを頂きながら 映画を観たりイチャイチャしたりして過ごした。
イケメン路線の若手俳優が汚れ役をやって話題になった映画だったが ハッピーエンドではなく悲しい別れのラストに胸が痛んだ。 痛んだ胸はひろと駅で別れて改札まで見えなくなるまで見送って それから新幹線が出てから今日のメッセージを送ってくれるまで続いた。
ひろと一緒についつい悲しい映画を観るのはやめよう。 ヒロインに感情移入してそれがあたかも自分に降りかかった悲劇のように 胸にガラスの破片が刺さって血を流した気分になってしまうから。 悲しくてこのままもう二度とひろに逢えなくなることを想像してしまうから。
「また逢いに来て良い?」 今日は珍しくこんな風に聞いてきた。 「また逢いに来てくれるの?」 そんな風に答えてしまうのも映画のせい。
気分を切り替えて家に着いてしまえば日常の戻るのに 彼との時間は日常ではなかったことにしなければいけない二人の秘密。 だから悲しい映画をもう観るのはやめようと思った。
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