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■ 葛藤。
階段の下に、死体があった。 血の海に沈む、あの人だった。 無意識に一歩を踏み出す。咄嗟に手摺を掴む。 喧騒が、一瞬途切れた。
背中が見える。情事の後だ。 眠っているのだろうか。あの人は動かない。 「どっちだ」 私はそんな事を思う。 ナイフを振りあげる。 ああ、まだ「死んでない」 これから、「殺すのか」
目をあける。線路に血が落ちている。 手を握り締める。唇を噛み締める。
「何もない。何も見ちゃいない」 言い聞かせて閉じた目は、すぐに赤く染まった。
どうすれば、見ずにすむ。 どこにも逃げ場がない。笑顔が、見たい。 一緒に、笑いたい。 なのに、手だけが動く。
怖い。
2005年11月26日(土)
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