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■ 波。
「うるさい」 小さく、小さく呟いた。
独りで、いる時ならいくらだって付き合ってやる。 私の中から生まれた、これに。 でも、絶え間なく見え続けるそれは、 場所も、状況も、選んでくれなかった。
目をあければ、あの人がいる。 目を閉じても、あの人がいる。 口から血が溢れ出す。手がそれを抑える。 味などしない。誰も、何も傷つけていない。 なのに、喉の奥から、身体から、血が吹き出す。 手が動く。握りしめる。振り払っても、また、動く。 首を掴む、爪を立てる。食い込んで、線が走る。 痛みが、私を覚醒させてくれる。この中にあっても。 まだ狂っていない。大丈夫だと、言い続ける事が出来る。
捨ててしまえば…何度もそれを考える。 笑顔も、幸せも、この先も、あの人も。すべて。
笑いたい。一緒に笑いたい。 生きたい。この先がどんなに辛くても、一緒に生きたい。
そう思う事すら、朧に、何も、浮かべられずに。 でも、必死で。
背中が見える。苦悶の表情が見える。 驚いた顔をして、そしてあなたが消える。
ナイフを持っている。 首を、締めている。 階段から、突き落としている。
「嫌だ」
頭を抱えて、喚き散らしながら、 なんとか、これを逃そうと、無様に、のた打ち回って。 それでも、消えない。これが、消えない。
つらいも、くるしいも、思っていないのに。 涙も、でないのに。
「嫌だ」
何度も、呟く声までが、遠い。
2005年11月27日(日)
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