空虚。
しずく。



 追想。

私の身体が不調を起こすようになってから、
あなたはよく、「愛してる」と言うようになった。
言えなくなるのが怖いのだと、後悔するのが嫌なのだと、
あなたは笑って、そう言って。私もまた、「愛してるよ」と紡いだ。

…誘われるように、死を選んでしまいそうになる。
こんなにも生きることを望んで、約束をし、立ち向かっているのに。
ただ、一瞬の痛みに、身を委ねてしまいそうに、なるほどに。
弱っている、といえばそれまでなのだけれど。

自分が、死なないように。あなたを、殺さないように。
そのふたつだけを願って、生きて、いるのだけれど。
つらい、ことも、かなしい、ことも、くるしい、ことも、
全部、切り捨てて、ただ、笑って、何も、言わずに、生きて、
ただ、この身体だけを、引きずって、心だけを、渡さずに、いるけれど。

吐き出せずにいる、何か、だけが、ずっと、あって。
思いっきり泣いてしまいたいのに、泣く、ことがわからなくて。
例えば、あなたが死んだり、あなたがいなくなったりしたら、
私は慟哭し、怯え、泣き叫んで、狂うことが出来るのかもしれない。と。
ありえないことに想像をめぐらせる、ことが出来るのに。

この先を、考えて。異質だというなら、言えばいいと、笑って。
棄ててしまったばかりに、何も怯えなくて、怖くなくて。
要らない、と認識したものはすべて排除したいと思って。
抑圧される感情だけが、溜まって。
いつしか、爆発しそうで、それだけが、怖い。

求める場所が、なければ。救いなど、いらないし、
元より私には、そう紡げる言葉がないのだけれど、
それを望まずにすむ事は、何も考えずにいられることなのだと、
少し、嬉しくて。あなたの前ですら、偽っていることが、苦しかった。

目が醒めれば、変わることなく現実はあって。
私はまた、日々の始まりに少し笑って、気合いを入れ、
同じ日をくり返し、同じことを思って眠りにつき、
少しだけ痛みを思い出して、なにも残さずに日を終える。

直面せざるを得ない時が、来るまで。

2006年01月15日(日)
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