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―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰

2008年12月28日(日)
生も時代も流動せしものなりて。


エヴァのユニゾンの回は勿論の事、何かと引用が多いので気になっていた犬神家を見てみました。そしてユニゾンと打っている間にシンクロがよぎったのかユニクロとか打った自分を殴りたいです。
結論から言えば、なんだこれ、なんですが。あの例によって文句ばかりなのでファンの方は部屋を明るくして画面から離れてヌルーしてあげて下さい。

あの、金田一さん、必要だった? 何をしょっぱなから話の根底覆しているんだですが。
何一つ事件は止められず、また作中で大して推理を披露してもいない、所詮その孫や子なんで違うコナンで育った世代ですからミステリーに造詣深くないんですが、最後の纏め役と言うくらいしか印象に無い。

映画というものだからやも知れませんが、説明不足な点が多過ぎる。
確かリメイク版だったと思うんですが、昔ならいざ知らず、斧琴菊なんてワードをそのまま話されても現代ではそれ程ぴんと来ないような。因みに自分は何か漫画で見た記憶がありますが多分コゲどんぼ氏かなんかの(それはどうでもいいから)。
ビルマについても、時代に即して説明を一言二言添えて欲しい。一種の専門用語と同義で、最早それ単体で誰しもが理解出来るものではなくなっている気がする。
猿蔵もなんの意味があっての配役なのか。勿論探偵ものですから犯人候補が多いのは構いませんが、なんていうか、関係性? ミステリアスな雰囲気が解明されないまま謎になるって、それどうよ。だってこれ探偵ものなんだろう。まぁ、全てを暴かなければならない事もありませんが……
珠世と佐清の間柄も、匂わせてはいたけれど、気がついたらロミジュリっていて、いつの間にかそんな決定的なシーンがあったのかと。まぁでもこれも猿蔵と同じで、なんでも説明するのが美徳じゃないって事だろうか。
それから、遺産。人がいつの時代も金に目が眩むのは百も承知、怨恨じゃない殺人なんて事故か金銭以外にはなかろうもんとは判りながらも、たかだが贅沢の為に、人の命を奪い、己の人生を棒に振る、なんて馬鹿馬鹿しい心情が全く以て理解出来ない。
それ故に醜いだけの相続争いも莫迦みたいに駒を溺愛している姿も釈然とせず、結果作品全体に対しなんだこれ、という感想になってしまったのかなぁ、と。

しかし時代による難も多分にあるとは思います。先のビルマの他、一企業が村を支配するなんて前時代的な、と思いつつ地方の事は知らないので今もそうした王制だったらばすみません。
でも、それは、仕方のない事だ。当時の時代背景を考えるのも大事ですし、この時代ならばこんな風に思っても当然かもと追想しても、所詮過去に思い馳せている時点で正しさなんてないし、現代に生きている人にとってはただのifだ。
平安の時代に男が女の元に通うのがお付き合いだったのだとして現代ではそれをアッシー君と呼んだりもするし(死語だ死語)、結婚前にセックスするのが恥だったのだとしても今では寧ろ躯の相性も判らず結婚出来るかと言う通説。
その時代に生きている人間には、その時代のルールが必要で、そしてそれに合わないと感じた人が新たなルールを作りそれが賛同された時、それがまたその後のルールになっていくんだ。


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