文ツヅリ | ||
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2004年07月24日(土) ★[ 04.酒 ] |
「辛いことを忘れるには酒が一番だ」 そう言って近藤さんは、俺の目の前に缶ビールを突きだした。 付き合えってことらしい。 「まーたヤケ酒ですかィ? 懲りないですね」 タダ酒ラッキー、なんて思いながらそれを受け取る。 飲み終わったら適当に話を切り上げてフケればいいし。 そんな軽い気持ちで向かいに腰をおろして、胡座をかいた。 すると突然、頭に霞がかかる。 ――ところで俺の歳を忘れてやせんか。まだ未成年ですよ 白黒の画面がぼんやり浮かぶ。 (……なんだっけ、これ。) カシュッ ゴク、ゴク 「……ッはー。よく冷えてやすねェ」 「だろ?」 ――取り締まる側の内情なんてこんなもんだ ――気にする方が無粋ってなもんだろう ぼんやりと、水中で会話してるような遠い声。 次から次と浮かんでは消える。 「今日お妙さんを後ろから見守ってたんだけどよォ」 「ストーキングってやつですかィ?」 「バッ! おまッ、それじゃ犯罪じゃねえか!」 ――おっ、結構イケる口じゃねえか 「俺のは違うね! お妙さんを悪漢から守ってたんだよ!」 「悪漢は近藤さんの方でさァ」 するとチッチ、と人差し指を左右に動かし。 「わかってないねェ総悟は」 ――ほら、もっと飲みな 「いいか、最初が肝心なんだ」 ――こういうのは最初が肝心なんだ 「好きだと思ったら即アタック! アタックあるのみだ!!」 ――とにかく飲め!ひたすら飲め! そうすりゃその内、いーい気持ちになってくるからよォ 「当たって砕けろってことですね」 「いや、砕けたら困っちゃうな……」 近藤さんは、ちょっと静かになった。 それからすぐに2本目のビールを開ける。 カシュッ ――カシュッ 「なんだ総悟、飲んでるかァ? 手ェ止まってるぞ」 ――なんだお前、飲んでるかァ? 「まァそれなりに」 なんなんだ ――飲んでますよ さっきから ――嘘つけ 減ってねぇじゃねえか ちらちらと ――あ、 なんだっけ…… 「そういやァ」 声に反応して目線をあげた。 言いかけておきながら近藤さんは、ビールを口に運んでいる。 口に含んでからゴク、と喉を鳴らして、大きく一口目。 なんか、似てる。 そう、 既視感 ……て、やつじゃないかなあ。 俺は昔も、こうやって喉を見ていた。 もう少しだけ、低い位置から。 白く、細い首の上で、上下する喉仏を。 覗き見ていたんだ。 「色恋じゃねえが、お前ら仲良くやってるか」 「え」 「トシとのことだ」 あ。 そうか。 「ああ……」 「なんだよ、煮え切らない返事しちゃって」 ゴクリ ゴクリ つられて、俺も飲んだ。 土方さんも飲んでいた。 ――ゴクリ ゴクリ そう、昔にもあったんだ。 同じような場面が。 「ん?」 ビールを飲み干した近藤さんと目が合った。 思わず口の端が上がる。 「イエ、」 「近藤さんと土方さんて、似てますよね」 一瞬、きょんとして。 「そうかあ? 初めて言われたけどな」 口を開けて豪快に笑った。 それは近藤さん特有のものだけど。 「そっくりでさァ」 二人が、というよりはむしろ。 ――お前 「あ、お前」 ほら、また。 『顔真っ赤だぞ』 息を合わせて、あの台詞を言ってみた。 やっぱりね。 少し、声を出して笑ってしまった。 そんな俺を、目を丸くして凝視する近藤さん。 だって、オカシイんだからしょうがない。 「そ、総悟くん……?」 「酔っ払うとね」 「近藤さんにそっくりなんでさァ。土方さんが」 ――まだ早かったかァ? ふいに、ニヤリ、と微笑む土方さんの顔が浮かんだ。 同時に靄が晴れて、記憶に色が戻った。 「俺、」 飲み終わった缶をテーブルに置いた。 カラ、と乾いた音がした。 「土方さんのとこ、行ってきやす」 膝に手を当てて立ち上がる。 瞬間。 強い、眩暈。 頬が熱い。 俺、こんなに酒弱かったっけ? 「そうか」 少しの間を置いてから返ってきた声は、心なしか明るかった。 変だな。 もう少し絡まれると思った。 ろくに愚痴も聞いていないのに、引き留めもしなかった。 しかし部屋を出る前に、上手くやれよ、と後ろから聞こえた。 それでようやく、今日俺が呼び止められた理由を知る。 どうやら端から愚痴る気はなかったらしい。 近藤さんも、とだけ返して部屋を出た。 「……敵いやせんねェ」 歩きながら小さく呟いた。 どうも近藤さんは、俺と土方さんの仲を本気で心配していたようだ。 もう俺としては過去のハナシなんだけどな。 土方さんを遠ざけてたこと。 俺もいつまでも子供じゃないのに。 まあ、そこが近藤さんらしいというか、なんというか。 (ああ、) だから近藤さん、なんだろうな。 土方さん。 昔から なんだかんだと言いながら、結局土方さんを見ていた自分と。 昔から 無意識ながらも、言動を真似るほど近藤さんを見ていた土方さんと。 あまりにオカシくて、ちょっとだけ涙が出た。 視界の端がぼやけてた。 目が熱い。 頬が熱い。 脳が熱い。 ただ、心臓だけがキンとして。 酒は逆効果だった。 忘れるどころか、いらない記憶を呼び覚まして。 気づかなくていいものに気づいてしまった。 それでも俺は。 おぼつかない足取りで歩いていく。 土方さんの部屋へ向けて。 それでも俺は、 まっすぐ歩いていこうと、 思った。 センチメントゥル沖田。 笑いあり涙あり。(語弊が 沖田ってすごい子供にしか見えない。ワタシダケデスカ。 このお題、エロネタばっか思いつくんですが、敢えてナシの方向で。 単に書けないってだけじゃないですよ! 多分。 |
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