文ツヅリ
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2004年07月11日(日)
★[ 03.相思相愛 ]
「土方さん」
「んだよ」
 屯所に入った途端、背後から名前を呼ばれた。
 確認しなくても誰だかわかるので、歩きながらそれに答えた。
 夕方の市中見回りが終わったところで、報告を済ませればやっと休憩がとれる。そしたら、一応なにか適当なものを腹に入れておこうと考えていたところだった。
 さて、何を食うかと思案していると、さっきの声の主――沖田が、急に目の前に回り込んできて俺の足を止める。
 
「ちょっと俺につきあってくだせェ」

 …………面倒くせェ。

 あからさまに顔をひきつらせて見下ろしてしまった。
 仕事の話ならともかく。
 最近沖田といると――ヤバイ。いろんな意味で。
 とにかく今は、沖田より飯だ。

 そう思って、最後の障りのないような理由だけを言いかけたが、飯について来られるのもやっかいだと考え直して適当な理由をでっち上げる。
 なにせ、ついこないだ金をパクられたとこだし。
「ああ? アフターファイブは即睡眠て決めてんだよ」
「なにジジィみたいなこと言ってんですかィ。 たまには」

 あ、目が合った。
 ヤバ――

   グイッ

 首に腕を絡めて引き寄せられた。
 やっぱり。
 これじゃいつもと同じパターンじゃねえか。

「俺とアソビましょう?」
 なーんてね、と口だけで微笑みながら沖田は囁いた。
 俺は。
 この目と声に、抵抗できない。


× × × ×


 月の光が土方さんに陰影を作る。
 浮かび上がる肌の色は、すごくキレイだ。
 たまらず喉に吸いついた。
 びくり、と首をよじるので、筋がすっと走る。
 だからそこに舌を這わせた。
 こういうの、いちいち誘ってるとしか思えない。
(だいたい、)

 たくさんキスをしながら、少し考える。

(土方さんも土方さんでさァ)

 どうして抵抗とかしないんだろ。
 手首こそ押さえてるけど、土方さんの方が力強いはずなのに。
 
「は……ッ」

 真っ白な腹を見せて。
 解剖される蛙じゃあるまいし。 
 
「んぅ……」

 そんなにおとなしくされると、ヤッてもいいんじゃないかと思ってしまう。
 これでも、

(自制してるんですぜ?)

「土方さん……」


 滑らかな肌を撫で回した後、胸の突起を爪先でかりかりと弄くる。
「…………」
「そんな無表情にしてても」

「乳首たってまさァ」
 言って、硬くなったそれをピンと弾いた。
 そしてペロッとひと舐めして口に含む。
 存分に舌でなぶりながら、右手は下腹部にしのばせる。
 腹の筋の畝を辿って臍へ、そして下着の中へ進入していった。
「沖田ッ」
 その声にふと、口だけ離して応答する。
「総吾、って呼んでもいんですよ?」
「……おきた」
「そ・う・ご」
「じゃなくて!」
「なんですかィ?」
 言いながらほとんど無表情のまま、土方さんの陰茎を握り締める。
「……ッ!」
 素早く下着をずらして、勃ちあがりかけてたそれを数回扱くと先走りの液が零れた。
「よかった、感じてやすね」
「よかない!」
 手の動きは止めないで、鎖骨付近にキスマークを施した。
「感じてるんですね」


× × × ×


 それだけでも自身が熱くなるのを感じる。
 変態か、俺は。

「違う……」
「嫌ならそう言ってくれれば、俺も手ェ出せないのに」
「い……ッ!」
「なんですかィ? イイ? イッちゃう?」
 沖田はぐっと握りこんだ手に力をこめた。
 なにが“手が出せない”だ?
 言わせるつもりなんてないんだろ。

 だいたい。
 抵抗しろ と言われたって。

 お前の、
 その。
 
  目が、

  熱が、

  声が。

 俺の身体を麻痺させる――。




 沖田はもう片方の手の指を俺の口につっこんで、ねっとり掻き回した。
 溢れ出す唾液をからめとって、それを肛門に塗り込んでいく。

「う、あ」

 穴に指が入り込む感触。
 嫌、な違和感。

 ――嫌?

 なら、こんなに熱くなってる俺はなんだ。
 握られて感じてる、俺は。

「もう3本入りやしたぜ。やらしィ」

悪かったな。
お前のせいだよちくしょう。

「いれますよ」

   ズル


 瞬間、皮膚の切れる音が身体ん中で響いた。
 指とは全く質量の違うもの――沖田のものが入口につき刺さって。
 肩を押さえられてズッ、ズッ、と進入してくる。
 それに合わせてぐちり、ぐちゅ、と濡れた粘膜のこすれ合う音。

 ああ、

 ――どうして。

 どうして俺は、こんなに身体をのけ反らせているんだ?
 自身を勃てて。
 汁を垂らして。

「熱い、土方さんの中」

 嬉しそうに揺さぶる沖田。
 ――やめろ。

「あ、」

 熱い。

「……ッは」

 変だ。

「あぁッ!……んぅあ……はッん」

「土方さん……!」


   グチャ


「……ッと……」

 ――もっと 揺らして

「土方さん」

――違う もっと もっと

「はァ……んッ!」

 ――奥まで もっと

「土方さん」

 ――もっと強く はやく

「土方、さん……ッ」





   プツッ




「ああああぁぁ―――!!!!」




× × × ×




 最奥をついたとき、土方さんの声が耳の奥に響いた。
 俺もそれで理性が飛んだ。
 ずっと、我慢してた精を吐き出した。

 もともと余裕なんてない。
 誰かを犯すなんて初めてだった。 犯したいとも思わなかったのに。

 どうしてこんなに気持ちいんだろう。

 荒くなった呼吸。
 動悸。
 どうしておさまらない?

 どうして、まだ中にいたい――?


「土方さん」


 ねェ、


「大好きでさ」


 聞いてますか。


「土方さん……」



× × × ×


 そのまま沖田は俺の上で動かなくなった。
 寝てしまったらしい。
「入れっぱなしかよ……」
 ごろ、と横に倒れると、質量を失ったものは入るときよりもずっと簡単に出ていった。
 俺は、まだ穴をひくつかせている。
 熱がひかないままで。
 溢れた汁が脚までつたっていたが、さほど気にならなかった。

「沖田ァ……てめ……余計なことしやがって」

 はぁ、と乱れた呼吸でためいきをついて。



 好きとか嫌いとか。
 そういうのじゃなくて。

 俺だって、

 好き だ。


 でも、これはそういうのじゃ なくて。

「全部」


 熱が、引かないのは――。


「全部、てめェのせいだ……」


 好きなら好きのまま



 何も

 知らないままでよかったんだ――。







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