愚者
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2006年04月18日(火) 漸近線

 はるか昔に、誰とも交わらないと心に決めた。
どんなに近づいても、決して接することのない
交わることなどは在りえない、そう思っていた。

 そうなる前は、人と人には揺るぎない信頼関係が
在りうるし、少数の人とそんな関係だと思い込み疑わなかった。
しかし、突然裏切りが明白になり、人間不信になった。
信頼していた人、尊敬に値する人、すべての人が
私の真っ直ぐな気持ちを利用していた。

 人は想定できないことに遭遇すると、呆然とする。
知人の訃報を知っても、しばらくは悲しみが支配する、が
呆然とする期間はそれほど長くない。
それは覚悟が決まるからだと思う。

 想定外のことに見舞われると、呆然とするだけで
何も考えられない時間が長く続く。
考えてもまとまらず、ようやく導き出した答えは
誰も信じることは出来ない、己だけが頼りだ。
そういう考えにたどり着いた。

 人間的に丸くなり、人の顔色を伺いながら
ある程度、見せかけの人間関係を築けるようになり
一部の人からは尊敬されたり、慕われたりもした。
ここ数年で、もう一度人といい関係を作れるのでは?
と思える人にもめぐり会えた。

 人と人との間には中立は存在しないと思っていた。
好き・嫌いのどちらかと、敵・味方のどちらしかないという
閉鎖的な考えが、未だに捨てきれてない。
もう一度本当に人と交わるには、どうすれば良いか?
答えは既に見つかっている。

 自分自身が本当に胸を張れる人間になるには
もう一度、心を開いて話すことを取り戻さなければならないが
閉鎖的な考えや裏切られた悲しみ・憎しみが
私の中に少しでもある限りは無理だろう。

 ただ、そう思えることで、少し心の霧が晴れたようにも
感じられる、が、一度ねじれて汚れてしまった心は
澄み切った空のようには、なかなか戻れない。
一日でも早くそんな日が来ることを願っているのだが
そうなるには、もう少しだけ時間が必要な気がする。


誠幻