蜜白玉のひとりごと
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2014年10月27日(月) |
できることなら雨の日にひっそりと |
というわけで、喜々として神奈川近代文学館で開催中の「須賀敦子の世界展」へ行き、江國さんと湯川さんのお話を満喫した。
日曜日、しかも「文字・活字文化の日」を記念して観覧無料ということで、午前中から人が多い。午後には対談もあって、天井の低い細くうねった展示室は人々の熱気で息苦しかった。人の流れを見ながら、無料なのをいいことに何度も展示室を出たり入ったり。展示内容はこれまでどの資料でも目にしたことのなかった須賀さんの手紙や写真が数多くあり、それらを見ていると途中から悲しくなってきて、できることならこんな人ごみの中じゃなくて、雨の日に一人でひっそりと見たいと思った。じっと息をひそめて、須賀さんと静かに対話したいようなものばかりだった。11月24日まで。来れるならもう一度。
変にしんとしてしまった気持ちを立て直すべく、喫茶室へ行ったらここもいっぱい。外へ出て橋を渡って隣りの大佛次郎記念館のカフェ「霧笛」まで行ってツナサンドとコーヒーを補給し、午後の対談に臨む(このときのツナサンドがとてもおいしかった)。
対談はずいぶん前にチケットが売り切れ、220人収容のホールは開場して間もなく満席となる。聴講者には思ったより年輩の方が多く、同じくらいの年齢の人はあまりいなかった。友人には須賀さんの作品を好んで読む人が多くいるから、会場を見て少し拍子抜けした。
今でもときどき思う。もし私が大学時代に須賀さんの文章を読んでいなければ、その後やってきたいろいろな出来事にもっと苦しい思いをしたに違いない。書かれた内容に直接的に励まされたわけではない。その効用は、遅れてじわりとやってくる。須賀さんの文章を読み、文章に伴走するような心持ちで、自分の置かれた状況を冷静に考えることができる。大学の講義の最後に須賀さんの本を紹介してくれたあの教授にも感謝したい。
対談の詳細は2014年10月26日のページにゆだねるとして、長年敬愛してやまない江國さんと、『須賀敦子を読む』の著者である湯川さんのお二人が、それぞれ須賀さんについて語る言葉を生で聴くことができる、ものすごく特別な時間だった。
対談に出てきたいくつかの言葉をもとに、私は私の中の須賀さんとその作品について、またじっくりと考えたい。
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「文字・活字文化の日」について、文部科学省のホームページより
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文字・活字文化振興法の制定
平成17年7月に,議員立法として「文字・活字文化振興法」が成立,公布・施行されました。この法律は,文字・活字文化の振興に関し,基本理念を定め,国や地方公共団体の責務を明らかにするとともに,地域における文字・活字文化の振興や,学校教育における言語力の涵養,10月27日を「文字・活字文化の日」とすることなどを定めることにより,我が国における文字・活字文化の振興に関する施策の総合的な推進を図り,知的で心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与することを目的としています。これを受けて,文部科学省においては,図書館の充実,読書活動の推進,学校図書館の充実等の施策の一層の推進などの「文字・活字文化」の普及・啓発に取り組んでいくこととしています。
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読書週間(文化の日をはさんだ2週間)の初日、10月27日が「文字・活字文化の日」で、文学館は月曜休館なので前日の10月26日が観覧無料だったわけか。
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