日々逍遙―この1冊、この1本、この1枚―
1冊の本、絵本、1本の映画、舞台、(ワインやお酒)、1枚の絵、CD。
散歩の途中に出会ったあれこれを…。

2002年02月20日(水) UFO少年アブドラジャン(シネマテークにて)

旧ソ連時代、1990年につくられ、1992年に公開された映画です。
まったく昔ながらのお鍋をさかさにしとようにしか見えない円盤の写真の載ったチラシを見て、無性に見てみたくなりました。
冒頭このお話の顛末を「スピルバーグ様」への手紙で語りかけているのだからSFXを
駆使したその映像を百も承知で、もう笑うしかないような超ローテク映画を作って超然としている1958年生まれの監督ズリフィカーム・ムサコフ、見終わってみると
凄いヤツなんじゃないかって思えてくる。
そこでファンレターをば。

拝啓ズリフィカーム・ムサコフ様
これまでスクリーンで出会い心の中に住みついてしまったあまたの少年たちの中にあなたの映画アブドラジャンが仲間入りしました。
この、風貌は「人間の金髪の男の子」なのに緑の血の生殖器のない完全生命体である少年がウズベキスタンののどかな草原に落ちてきてからの物語は、その心底嘘っぽいUFOや見るからに模型をワイヤーでつってすれ違わせているアメリカとソビエトの宇宙船、アブドラジャンがコルホーズにもたらす巨大スイカのいかにも張り付けただけ、という映像、これらすべてが物語をチャーミングに彩る効果になってしまう不思議な経験をさせてくれるものです。
この事実は、あなたが尊敬しているスピルバーグ様に果敢に挑みかかっているのだろうな、という思いを裏付けます。
アブドラジャンの性根の優しいこと、無垢なこと。彼を匿い、「隠し子」として世話するバルバザイを「お父さん」と呼び彼を思ってその超能力を駆使するあたりのエピソードを見ていると、あなたが異星人を登場させて描きたかったのは、この子にこんな優しい感情を湧きおこさせる、地球での「お父さん」「お母さん」、痩せた土地を耕すコルホーズの人々、だったのだなぁ、と感じるのです。
ラッセ・ハルストレム監督の「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」をご覧になったことがあるでしょうか。
この映画には母親が病んで、叔父のもとに預けられる少年が登場します。ここに描かれた村人たちの大らかさ、懐の深さ、に通じるものを、このコルホーズの人々は持っている、とも思いました。
次回作が、日本で上映されるのを楽しみにしています。


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みねこ

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