2002年03月03日(日) |
ル・シネマ(ギドン・クレーメル WPCS6177) |
ギドンクレーメルは、旧ソ連、ラトヴィア生まれのヴァイオリニスト。 ル・シネマは最初に手に入れたCDです。 若い頃アメリカ映画に心惹かれ、行列をして手に入れたチケットで観たというクレーメルは、 「映画は私にとって芸術です。この芸術の巨匠たちから私は音楽のインスピレーションも与えられています。」 とル・シネマのライナーノートに書いています。 このライナーノート、冊子になっていてCDでとりあげている一曲、一曲についてクレーメルの曲に託す思いが綴られています。 このCDには、やはり映画に対する深い愛情を持ってたくさんの映画音楽も手がけた武満徹が―アンドレイ・タルコフスキーの追悼に―と副タイトルをつけて作曲した「ノスタルジア」も収録されています。 続いて手に入れたのが、「バッハ 無伴奏ヴァイオリンパルティータ」。5年ほど前になるでしょうか。 静かに本を読みたい時には、カザルスの「バッハ 無伴奏チェロ組曲」か、この「無伴奏ヴァイオリンパルティータ」を。
一昨年、念願かなってこのクレーメルと彼が率いる室内オーケストラ「クレメータ・バルティカ」の来日公演を聴きに。 50歳を期に、出身地のラトヴィアをはじめ、エストニア、リトアニアのバルト3国の若者たちと結成したクレメータ・バルティカ。 ピアソラやラトヴィア出身の作曲家ヴァスクスの「遠き光・声」、をレパートリーとする彼らをにこやかに見守るクレーメルは良き父の印象でした。 ソビエトの弾圧への抵抗運動からバルト3国の独立から10年余。 圧政に苦しみ、長く自国の言語、文化を奪われてきた歴史は、強い自由への希求や その民俗的独自性への深い認識をこれらの国に育った人たちにもたらしたのでしょう。 クレーメルの故郷に回帰する思いが、「クレメータ・ヴァルティカ」という形に結束して、その表現が普遍的に世界の人々をゆさぶる力を持ち得ている、というその事実は、「人が人に働きかけて内面的なことろで人を動かしていくことって何て素敵なんだろう」という場所にいつも私をひき戻してくれます。
クレーメルの演奏。情感をたたえているのに甘さがない。技巧にたけているのに衒いがない。大好きです。
無伴奏ヴァイオリンパルティータ PHCP10570 ヴァスクス 遠き光・声 WPCS10207 ピアソラ 天使のミロンガ WPCS10032
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