2005年05月01日(日) |
向田邦子『阿修羅のごとく』 |
ホームドラマといえば向田邦子なのですが、この『阿修羅のごとく』は、ちょっと辛口。 「ぶつかり合いながらも強い絆で繋がれていて、やっぱりあったかいもんだよね、家族って」なんて、ほんわかさせてくれません。
老夫婦とそれぞれに独立した4姉妹の物語ですが、「渡る世間は鬼ばかり」みたいに、激烈な本音をお互いに延々とぶつけ合うような体育会的すったもんだでもありません。 むしろ、誰もが本音を隠して生きているのです。 家族という近い存在のはずが、一番大切なことは話せずにいる。 それぞれが大人になった今、家族という固定された枠の中では、自分のキャラを役割として演じている。
この物語はけっして甘くないし、救いもないんだけど、でも、家族の現実ってこういうもんだよね。
テレビや本に描かれる円満なホームドラマのような家族なんて、ほんとはどこにもないのでしょう。 そのことに気づいたのは、理想と現実のギャップに一人いらいらして、家族に反抗のかぎりをつくした子ども時代を過ぎて随分たってからだった。
家族だからこそ辛らつになるし、上っ面で済ませられない。 些細なことが気に食わなかったりちくちくつつきあったりする。 リアルな家族の物語です。
この作品は、ドラマのノベライズなのですが、向田作品独特の洒脱な感じまでは活字化されておらず残念。
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