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■ いたみ(お題:30)
※「飛び出して溶け込んで染め上げて」番外編 ↑タイトルクリックで、小説に飛べます(別窓)
いたみ
人が飛び降りたことで、立ち入り禁止にされ、更にはフェンスまで強化されてしまった屋上に、ひっそり佇む少年の姿。 誰かに目撃されてしまえば、すぐに連れ戻され、延々と説教をされるのは必至だが、幸いなことに目撃者は居ない。 それもそうだろう、現在は授業中だ。体育もあっていないので、外は静だ。 少年がどうやって立ち入り禁止の屋上に入ったのか、は至極簡単なこと。彼にはピッキングの才能があるのだ。と言うよりは、コツを教えてもらったのだ……この屋上から飛び降りた、彼の友人に。 「嫌な色」 目の前に広がるのは、友人と最後に見た、友人を誘った忌まわしい色。 それは祝福なのか慰めなのか、空はとても青かった。 多分、両方なのだろうと少年は思う。空になりたいと願った友人の、祈願達成の祝福。それと同時に、大切な友人を引き止められなかった己への慰め。
「なぁ、翼はやれないから、これで我慢しろよ」 そうやって、両手いっぱいに抱えていた物を、思いっきり空に向かって放った。 フェンスの間や、風に乗って舞うそれは、幻想的で美しい。 だが、この行為によって少年は、自分が屋上に居ることを知らしめたことになる。 だから、急いで屋上を後にし、階段を駆け下りる。
窓から外を眺めていた者達は、その舞い落ちる綺麗な物に目を奪われる。 「羽?」 「違うよ、……花弁だ」 「本当だ、真っ白い花弁だ」 教師の静止も気に留めず窓から腕を伸ばし、手に掴んだのは純白の花弁。 空から舞うその姿は、まるで羽のようで、ふわりと、軽やかに舞う。 慌てて数名の教師が屋上に向かった時には、誰の姿も無く、扉にはきちんと鍵が掛けられていた。 残っていたのは、舞うことの出来なかった無数の花弁。
全力疾走で階段を駆け下りた少年は、友人が息絶えた場所へと足を進める。 そこには、一番多く花弁が積もっており、ほんの少しだけ救われた気がした。 地に落ち、傷んだ花弁を一枚拾い上げ、再び空へと放る。 ひらひらと落ちるそれに、胸を痛め、なき友人を悼む。 「馬鹿野郎」 青と白のコントラストの美しさに、己のしたことを呪いながら呟いた。
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「飛び出して溶け込んで染め上げて」番外編 30.それは祝福なのか慰めなのか、空はとても青かった を使用。本編、「・・・馬鹿野郎」の直前のできごと。 ちょっと突っ込み所満載ですが、流して下さい(汗) 友人追悼話。タイトルのいたみが平仮名なのは、意味が重複してるから。 因みに、花弁はバラだったりします・・ゆりでも良いですが。 どちらも共通した花言葉は純潔。ただ、何となく空のイメージで・・。
お題5つ目・・道のりは長い。
2004年02月22日(日)
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