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■ そっけない歯科
明らかに虫歯進行中という臼歯があって、治療しなくてはしなくてはと思っていたのだけれど、通っていた歯医者は評判のよいところで診てほしい時にすぐはいどうぞというわけにはゆかず(1週間くらい待ったりする)、逡巡しているうちにとうとう歯がぽろりと欠けてしまった。それでセカンドチョイスとして以前から気になっていた歯医者に行くことにした。 その歯医者はりー実家の近くにあり、ということはKを預けて行くのに具合がよく、更に飛び込みでも待たされず、しかし腕はよいという。技術は重要だ。ただし全体が淡々としていて(ブラッシング指導とかそういうのはない)、それがまあ寂しいとも言えるが、話が早くてよいと解釈することもできる。
玄関に入ると靴が5足ほどあった。予想より人が多い。タタキに靴を脱いで置くのだが、その靴のつま先はてんでばらばら脱ぎっぱなしで、1足として揃えられたものはない。つまり、このような場で靴を揃えようという配慮がある客層ではないわけだ。と書くといやな感じだが、なんだかそれはそれである意味いさぎよく、笑えてきた。靴を揃えることがいかほどのものかと。とはいえ私には倣う勇気が出ず、隅の方に靴を揃えてしまう。 平日の午前、中で待っていた、つまり靴を脱ぎっぱなしにしていたのは、じいちゃんばあちゃんおっちゃん達だった。受付で、かなりお待ちいただきますが、というようなことを言われる。そっけない歯科(仮)はインテリアもそっけないし待合室の中もそっけない。雑誌らしい雑誌もなく(歯科向けのPR誌みたいなのはかろうじてあったが)、ETVが流れているだけ。しかしたまたま持っていた本を広げたりテレビを観たりしているうちに順番が回ってきた。 気になるところはありますか、と先生に聞かれた。欠けた歯と、ついでに以前から気になっていた前歯のステインが取れるかどうか尋ねる。「あ、簡単に取れますよ」とのことでほっとする。欠けた歯の、ちょうど反対側にも虫歯が1本発見された。というか、わざわざ「発見」というまでもなくわかりやすく黒ずんでいたのだが、懸案の虫歯にすっかり気を取られてしまっていて、全く見えていなかったのだ。とりあえず懸案の方から治療することにして、もう1本は日を改めることとなった。 先生から、どのような治療が行われるかが説明された。スタッフの数が少ないせいもあって話し声がするわけでもなく、音楽が流れているわけでもない。淡々と治療されていくので、ステインの方が忘れられているのではないかと思ってしまったが、ウイーンウイーン言う機械が臼歯から前歯に移動していったので、忘れられていなかったと安心する。 ありがとうございました、と何度か言って診察室を出たけれど、助手の人はともかく、先生は予想に違わぬ淡々とした態度である。たぶん悪気はないが、自分に話しかけられているとはまさか思ってもいないようにも見える。こんな時いつもなら、挨拶しているのに!と思ってしまうところだが、この先生ならさもありなんと腹も立たない。というか、むしろ感心する。 待たされるはずが、多めに見積もっても1時間半でりー実家に到着した。あれ、早かったね、とりー母は言った。賑わっている歯医者なら、予約を入れた上で1時間半かかったとしてもおかしくはない。どうということのない時間だ。 2回目にして最後の治療の予約は翌日の午後にした。予約もすぐに取れるのだ。少し早めに到着すると患者は私1人。臼歯を一本治療して、支払いをして、たぶん実家を出てから30分経ったか経たないかという素早さでKを迎えに行った。
黙っていろいろなことが進行していくのはいやだ。といって言葉でごまかされるのもいやだ。そっけない先生は、そっけないけれど肝腎の治療がごまかされている感じはしない。 でも待合室に週刊誌くらいあってもいいかも。
2009年07月21日(火)
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