星降る鍵を探して
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2003年09月18日(木) 星降る鍵を探して4-3-10

 逃げ道はひとつだけあった。正面に見えている、スチール製の扉だ。
「あれはどこへ続いてる?」
「非常口よ。下までずーっと階段が続いてる。一階まで行けるわ」
「ありがとう」
 言うと玉乃は目を丸くした。
「信じるの?」
「もちろん」
「呆れた。早死にするわよ」
 ――騙されても別に支障はないし。
 とはもちろん口にせず、克は恐らく聞き耳を立てているであろう、桜井の気配を窺った。しかしなんの気配もなかった。相変わらず気配の希薄な奴だ。
「いいこと教えて上げましょうか」
 絶妙なタイミングで玉乃が邪魔をする。
「あたしが……あなたが敵だとわかったのは何故なのか、知りたくない?」
「玉乃」
 と背後で、桜井の声が聞こえた。
「出てこい。怪我するぞ」
 くす、と玉乃が笑う。答えた声は、ほとんど揶揄すると言っても良いような、楽しそうなものだった。
「いやよ」
「どうして? 新名に寝返るのか」
「出ていったら撃たれそうだもの」
 すると桜井も笑った。
「勘がいいな」
 何て会話だ。
 克は体勢を整えた。座り込んでいた体勢から、しゃがみ込む姿勢に変える。玉乃を抑えた手はそのままで、背中を机の裏に当てる。こういうのは卓の方が得意なんだけどな、と思いながら試しに力を込めてみると、机がわずかに持ち上がった。
 玉乃が目を見開いた。
「すごい。力持ちね。ね、放しても大丈夫よ? あたしは指一本動かさない。もちろん起きあがったりしない。誓うわ」
 全身の力を込めている克は返事をする余裕はなかった。この机は恐ろしく様々な機械が乗っている。ひっくり返すだけといっても、ひとりではなかなか骨が折れた。
「……玉乃」
 後ろから桜井の咎めるような声がする。玉乃は微笑んだ。
「今だけよ。お礼がしたいの」
「お礼?」
「あなたの撃った弾から、あたしを助けてくれた、お礼」
 ――気づいてたのか。
 克は一気に机をひっくりかえした。玉乃が上手く足を引っ込めて挟まれるのを防いでいる。
「持ち物を」
 そうしながら玉乃が囁いた。
「もう一度チェックした方がいいわよ」
 桜井の発砲した弾が克の頭上、ほんの数センチ上をかすめていった。机の影に身を隠しながら手近にあったキャスター付きの椅子に蹴りを入れる。椅子は勢い良く、先ほど玉乃から聞いた『非常口』の方へ滑っていく。椅子が飛び出したのとタイミングを合わせて克は逆方向、つまり桜井のいる方に飛び出した。桜井のような男でも、先ほどの会話を聞かせて置いた上、勢い良く飛び出した椅子に一瞬騙された。一瞬あれば充分だった。桜井の隣を走り抜けざま、克は玉乃の持っていた銃を発砲した。当たらないのは覚悟の上だ。
 不意をつかれた桜井が体勢を崩すのを尻目に、克は手すりから――あの地球儀のある巨大な空間に向けて飛び降りた。
 最後に玉乃が囁いてきた、「持ち物をチェックしろ」という言葉が、脳裏でわんわん鳴り響いていた。

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持ち物チェックは基本ですね。
文章が恐ろしく乱れている。骨格だけって感じだ。すみません。サイトアップ時に直します。


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