二人は出会えない
出会えないのだろうか
それとも
彦星はいつものごとく
ボタンのほつれたシャツをそれでもきちんとしわを伸ばして
小さな鏡の前でああでもないこうでもないと
ベッドに誘う文句を考えているのでしょう
とびきりの彼女を
とびきりの今日のため
織姫はというと
それはもうお祭り騒ぎで
真新しいワンピースと履けば壊れてしまいそうな彼女の如く華奢なピンヒール
数え切れない化粧品をあちらこちらに
あれがないこれがないと時折金切り声をあげて
姿見の前で長い睫毛をといているのです
とびきりの彼を
とびきりの今日のため
今宵の薄雲は一体誰の為なのか
彼等の逢瀬の邪魔者なのか
それも秘め事を隠すとっておきのヴェール?
一年越しの再会はただ、ただ美しく、甘美。
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