PHANTOMPLUS 読書記録

2004年11月26日(金) 天は赤い河のほとり(漫)

 篠原千恵女史の、長期連載でした。初めて読んだときにはまだ完結しておらず、かつ長期連載だったために、一度は出端してしまったコミックスを数年経って一気に買い揃えたのを覚えています。
 篠原千恵氏自体は、それ以前から知っていました。さらに言えば、少女コミックで『海の闇 月の影』を連載を追うように読んでいました。小学生くらいだったかな。
 何故、この『天は赤い河のほとり』を選んだかと言うと、私の目指すファンタジーの一片がこの作品にあると思うからです。ただの恋愛ではなく、かといってただのファンタジーではない。歴史モノだといえばそうかもしれないけれど、この話にはしっかりと『人間』が書かれている気がしたのです。
 舞台は紀元前のトルコ。いわゆるメソポタミア文明のあたりです。古代文明というとエジプト、中国に先行されがちなのですが、メソポタミア。正直、私も詳しくは知りませんでした。多分楔形文字とかだろうな……という知識しか。

 少女向け漫画と侮るなかれ。もちろんデフォルメも、都合のよい解釈も有ります。創作だから。けれど、歴史に忠実に出来るところは、忠実に描いてあるのではないかしら。研究者に言わせればまた違う意見も出そうですが。
 ストーリーは王道。現代から太古の世界に召還された主人公の女子中学生は、たまたまその国の皇子に命を救われます。その皇子こそが、主人公の命を狙う王妃の一番の敵で、自然主人公とつながりを持っていくことに。
 現代に帰りたがる主人公も、だんだんとその皇子に惹かれ、さらに主人公の持つ魅力はヒッタイトをひきつける……
 という、王道。

 脇役も立っています。一人一人にしっかりと過去をつけている感じがします。正直なところ、私はこの話を読んでからメソポタミアに興味を持ちました。そして、この話にあるものを資料で見つけるたびに喜んだものです。

 幾つモノ軸を複雑に絡めながら、それでも根幹を見失わずに、最終的に収束させる手腕はいつもながら見事です。結構お勧め。とはいえ、長いので……どこかで読めれば読んでみてください。(漫画喫茶とか?……行った事が無いのでわかりませんが、読めるんですよね)

 個人的には書記官が素敵です。イル・バーニが。


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相月 [MAIL] [HOMEPAGE]

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