「きれいね」
そう言ってつぐみは目を細めた。きれいね、あなたの髪。 スクアーロは願掛けのために伸ばしたその銀髪が、今この時のためにあるのではないか、と錯覚しそうになり、自嘲した。 つぐみの髪は亜麻色で、ふわふわとしたウェーブがとても魅力的だった。 誰かはそれを天使のようだと言ったし、別の誰かはそれを女神のようだと言った。 彼は、それを聖母マリアのようだと思っていた。 しかし実際にはつぐみは天使でも、女神でも、マリアでもない、ただの殺し屋であり、だから彼らのその位置づけは一つの懺悔のようなものであった。 つぐみをマリアとするスクアーロも、沢田綱吉をメシアとするつぐみも、降りかかる血の重圧に耐え切れない小さな人間にすぎないのだ。 彼らはそれに気付いているようであり、また、気付かないようにしているようでもあった。
「・・・別にいいことないぞお、こんな髪」 「そう?私はうらやましいけれど」 「なんでだあ」 「女は美しいものに目がないのよ」 「・・・」 「でも、任務の時は少し邪魔?」 「まあなあ、あと」 「あと?」 「血が目立つ」 「・・・そうね・・・」
つぐみは任務のとき、必ず黒い服を着た。 彼女の使う「武器」は、スクアーロのそれのように多くの血を呼ぶものではなかったけれど、敵の肉を貫通したそれが引き抜かれる瞬間、その血液が身体や服に多少付着するのは避けられない。 だから、彼女は黒い服を召し込むことにした。
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