カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 疲れ果てる

=疲れ果てる=

なしくずしになく。なし崩した後は化粧がこぼれて、目の下に滲んだ黒い沁み。際立って見えることはないが、年老いた跡が、刻まれて、目を逸らした先の窓ガラスが透かすのは、雨だ。雨が濡らしたアスファルトのように僕の心に溶け出したタールが浮くと、消し損ねた吸殻が燃え損ねて、異臭が君の鼻先をついたら、すべてを投げ出したくなってしまった。僕も、君も、二人して、泣くことも、笑うことも、忘れることも、できないから、伝票を持って僕は去る。靴の中に滴り続ける。傘を忘れてしまえば。薄い靴底は水溜りに沈んでしまったよ。僕の闇泥とした気持も惨憺。たんたんと、踏みつぶしていく。僕の靴下は疲れ果てる。なにもかも。
疲れ果てる。

2008年11月26日(水)
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