カエルと、ナマコと、水銀と
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 カエルと、ナマコと、水銀と

=カエルと、ナマコと、水銀と=

肺の風船の中にカエルがいて、鳩尾のあたりに青いナマコがいる。カエルが肺を内側から蹴ると、僕は笑う。ナマコの方は、2足歩行するナマコらしいが、足がないので、嘘だったのろう。胃には水銀。もっともらしく重くして、少しでも僕に中身をいれる。ただの張りぼて。そんな存在。でも大事。

=柿春カラス。=

熟れた柿を見上げてると、年老いたカラスがやってきて「これは柿じゃないよ」と言って飛び去っていった。一見柿にしか見えない。でも、違うのかもしれない。とりあえず確認することはできない。高い枝になっているから。でも、そもそも、春に実っているのだから、柿じゃないのだろう。



支離滅裂なことを書き連ねると思う。もしかしたら「文芸日記」の意味を取り違えてるかもしれない。インスピレーションというか、頭に浮かんできた風景を書くことにする。

2002年04月04日(木)



 濃霧の林

=濃霧の林=

夢だ。多分。僕は独り、パジャマで歩く。それも、濃霧の林を裸足で。しめった落ち葉の感触が足の裏に。そして、時々、枝を踏む。
でも、きっと、夢だ。

2002年04月05日(金)



 避雷針の音

=避雷針の音=

避雷針はかくかく奇妙に曲がって、地面から生えている。林みたいに避雷針がぽつぽつ立っている。地面の下には避雷針がずっと先まで伸びている。もしかしたら、地球の真ん中まで延びているのかもしれないし、すぐそこまでしかないのかもしれない。
周りの避雷針に雷が落ちる。光って、同時に爆発音。ぱちぱち音が残って、電気はどこか知らないところまで走ってゆく。避雷針が伸びているところまで一気に走ってゆく。走り抜けてゆく振動が、避雷針を震わせる。そして、音が鳴る。金属を曲げて元に戻したような音。

=ココは=

ピエロが言った。「ココは君の来る場所じゃない」僕は聞く。「なんで?」ピエロは眉をしかめていった。少しハの字型の眉。
「ココには夢が無いからさ」
本当は意味がわからなかったけど、分かったような気もしたので頷いたら、僕は眼がさめた。夢には夢がないんだ。

2002年04月06日(土)



 寒冷夜

=寒冷夜=

花火が夜空に消え行くように、やがてココも暗くなる。深い深い濃紺の夜。
星が高いところで寒そうに瞬いているのを見つけて、僕は白い息を吐いた。星まで届かず途中で落ちてきた。

=ガラス瓶の海=

小さな海がガラス瓶の中に入っていて、手にとって振ってみると嵐になった。あまりに小さな海だから私は偽物だと思っていたのだけど、それは本物の生きた海だった。
沈没した船。深海魚。海底火山。カニ。すべては波の中に漂っていた。



2002年04月07日(日)



 畦道、トンボ又はカエル、夜。

=畦道、トンボ又はカエル、夜。=

目の隅でちらちら動くモノがいて、辺りを見回すと、トンボがいた。一匹を目で追いかけていると、そのうち数が増えてきて、いつの間にかトンボに囲まれていた。前からいたのか、今になって増えてきたのか。
カエルが鳴いた。そしたら急に夜になった。前から夜だったのか、今になって急に夜になったのか。
ふと気付くと、家にいた。

=紅茶の揺らめく=

紅茶をいれて、砂糖を入れて、ミルクを入れようとのぞき込んだら、綺麗な色に揺らめいているのを見てしまった。ほんの少し時間が止まって、また動き出した。ミルクは入れずに、紅茶を飲んだ。

=タールが回る=

放課後に煙草を吸って僕は、俺になる。マイルドセブンの一本目で、僕は俺になり始め、二本目を吸い終わるとちゃんとした俺になる。そして、最後の煙を吐き出し、もう一息ため息を付く。タールが、頭の血管を収縮させてることを考えながら、俺は一歩目を踏み出すんだ。



2002年04月08日(月)



 シナビタきのコ

=シナビタきのコ=

「でも君は結局頑張ろうなんて思わないんだろう?」
自分で「しまった」と思うよりも早く、彼はシュンと萎びてしまった。
「ああ、そうかも」
トーンダウンした声に、細められ、潤んだ瞳。顔は下を向いて、影ができてる。
張りぼての鎧をつけたハリネズミ。繊細で、無邪気で、おしゃべりで、臆病で、弱い。
喋ってないと、押し潰されてしまうんだ。

=何かを待ってる=

霧が晴れた後、目の前に暖かい街が広がっているのを無意識裏に願ってて、壊れきった廃墟の街を目にしたとき、淡い期待は裏切られる。
例えそれが、自分で壊した現実であっても。

=終曲時間=

彼女が音も、波さえも立てずに沈んでいく。等身大のマネキンがゆっくり沈んでいくように、もがかず、息を吐かず、表情を変えない。彼女の顔は、次第に碧味がかかってきて、いつの間にか消えている。
何もない湖面のどこに視線を置けばいいのか、迷っている。



2002年04月09日(火)



 浮遊隕石

=浮遊隕石=

会話が終わって笑いを止めてみると、グレープフルーツジュースに浮かぶ氷のような僕がいた。綺麗な柑橘系の色の液体に、固体で一つ。接しているはずなのに、不安定に浮かんでる。
少しずつ辺りの笑い声が遠退いていって、ノイズに変わって、また同じスピードで戻ってくる。
口を開いて、笑みを作る。日常。

=ガラスの萎縮=

ガラスに張ったガラスの生育した結晶が、太陽の光に見つかって溶かされていく。まるでそんな様子で、彼の才能を含めた全てが、萎んで行き、消えてしまった。


2002年04月10日(水)
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