『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2015年12月22日(火) 冬のさかり。

うまれた場所とそこをつくったひとをおうちと思うなら
もう、それは取り戻せないとおいところに消えてしまっていて
だから、あの小説の主人公のように

どこにでも居られるかわりに、どこにもなじまない。

…そんなふうにふわふわといきている。
祖父が逝ってしまってからこのふわふわは
また頼りなさをぐっと増した、ように
じぶんでは、感じている。
水をつめたビニル袋のうえに乗ってわらう。

本格的に家を出て、トウキョウに移ってから3年、
たまにこうして「帰ってきて」思うのは
すくなくともぼくは、
この思いのほか小さな部屋でまだ髪の短い小学生だったころから
今とあまりかわらない場所までそだったのだということだ。

15のときに買ってもらったベッドで
小学校の卒業制作だった彫刻の箱や図書館学の教科書や
あのことお揃いで買ったきいろい魚のペンダントがさがる
うす茶色の小花の壁紙の、この部屋で。

まもられていなかったわけじゃ、なく
でも、護ってもらえたのかはわからない
20年のじかん。

……そんな苦労だけじゃなかったはずだよと
いいこともあったはずだよと
曖昧模糊とした視界にさがるカーテンを
きずあとだらけの手で持ち上げて
キノウをあかるくしようとこころみているぼくもいるのに

いつか、だれか
気づいてくれるかな。



転校生「エンド・ロール」をききながら
真火


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