誉め言葉
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K先輩に、私がすぐに具合が悪くなる女だと思われたらアウト。 きっと優しい先輩の事だから、私の身体を気遣って誘ってくれなくなるだろうと思いました。 私に無理をさせないように、そうしてしまうような気がしたのです。 不思議と、面倒な女と思われるとは考えませんでした。
「えー?そんなこと無いですよ?」
私は、極力明るい声で言いました。
「でも、中学ん時、よくお前具合悪そうな顔してたけど、少しは健康になったのか?」
そう先輩に言われてドキっとしました。 先輩はあの頃、ちゃんと私を見ていてくれてたんだ。 そう思うと物凄く嬉しくなりました。 でも、ふと考えると。 私はあの頃、先輩の視線を意識して演技していた事が沢山ありました。 意味も無く大袈裟に笑ってみたり、急に真面目な表情にしてみたり。 そんな私の真面目な時の顔を、先輩が誤解している可能性もありました。 だからと言って、今更「あれは、演技です」なんて笑ってカミングアウトなど、私には出来ませんでした。 現に、今日だって、嘘の表情を一度も作ってないとは言えない状態でした。
「そうです。高校に入って健康になったんですよ。」
私は、取り合えず中学の時に身体が弱かった事だけは認めることにしました。 でも、先輩の表情を見ると納得してくれてないような気がして、
「それに、私の顔色が悪いのは生まれつきなんで、気にしないで下さい」
と付け加えて言いました。 すると、先輩に真顔で
「お前ほんと、色、白いもんなぁ」
とジッと見つめながら言われてしまい、私の心臓はドクンと鳴りました。 単に先輩は、顔色の事を言っただけなのに、私は勝手になんだかエッチな事を言われたような気分になり、ドキドキしました。
「えー?Rの方がずっと色白じゃないですか?」
自分の焦りを誤魔化したくて、咄嗟にRの名前を出してしまいました。 先輩が以前、Rを可愛いと誉めていた事に嫉妬していたクセに、自分からRを誉めるような事を言ってしまいました。 先輩の答えは案の定、
「おお。あの子は、すんげー白かったなぁ・・・」
と言い出しました。 私はまた、自分で自分を落としてしまったような気がして、激しく落ち込みました。 先輩の、今、その頭の中にはRの顔がある。 そう思うと、出来るなら掻き消したい気分でした。
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