白い車
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M子と学校を出て100mも歩かない内に、前方に白い車が止まっているのが見えました。 高校生ともなれば、車持ちの彼氏が居る子も多く。 時々、誰かを待っているような車が止まっている事もありました。 でも、私の通っていた高校では、歩行態度が悪いと近所の住民から苦情が来る事もあったらしく。 学校から駅までの道を登下校の際に教師が巡回している事がよくあり、車に乗り込む所を教師に見付かっている子を見た事もありました。 その子は別の科の子で全く関わりの無い子でしたが、教師に目を付けられているような、目立つ子だったので、顔だけは知っていました。 その時の車も、やはり白でした。 車種などには全く感心が無かった私は、遠くからその車を見た時に、「きっとまた同じあの子の彼氏だろう」と思いました。
車に近づくにつれて、外に人が二人立っているのが見えました。 遠目でも、それは高校生には見えず。 どちらにしても、関係の無い事だと車の方を見るのを止めて、話しているM子の方。 車とは反対側を見ながら横を通り抜けようとしていました。
「亞乃っ」
女性の声で呼ばれ、驚いて通り過ぎようとしていた車の方を振り返りました。 そこには、バイト先のMさんと見知らぬ男性が立っていました。 白い車は、私を待っていたのです。
「えー?どうしたんですか?」
驚いて私が尋ねると、私の事を待っていたとMさんは言います。
「バイトでしょ?私たち、そっち行くから送ってくよ」
とMさんは車に乗るように言ってくれました。 私は、今、ここで車に乗るのを教師に見付かったらという思いと、Mさんが居るとはいえ、知らない車に乗ることに少し抵抗がありました。 下校時間なので、他の生徒もジロジロ見ながら通っていきます。
「え?でも・・・」
私が戸惑っていると、M子が
「私もいいですか?」
と言い出しました。 私にとってはMさんはバイト先の先輩でも、M子にとっては見知らぬ他人です。 彼女のちゃっかりした性格は知っていましたが、少々驚きました。
「いいよいいよ。ほら、早く乗んな」
Mさんにせっつかれて、 そうだ。ここでグズグズしてた方が先生に見付かるかもしれない。 と思った私は、前後の道を教師が居ないかどうか確認し、車に乗ることにしました。
車の後ろの席に乗り込むと、そこにはもう一人男性が居ました。
「お邪魔します」
その男性の顔もロクに見ずに私は挨拶をしました。 多分、その男性は「どうぞ」と返してくれたと思います。 Mさんは助手席に座り、もう一人外に居た男性が車の運転席に座りました。
車は、学校の方向に向いて止まっていました。 Uターンできる道では無かった為、一度、学校の方に走って周りをグルリと周るといわれ、私とM子は乗り込むとすぐに伏せるような格好で隠れました。 学校を周り、元歩いていた道を走っている時、少しだけ顔を上げて外を見ると。 車の止まっていた少し先の道に教師が学校に向って歩いて居るのが見えました。 車に乗る時間が少しズレていたら・・・ なんだか、とてもスリリングな事をしたような気分になり、楽しくなりました。
学校から大分遠ざかって落ち着いて来ると、Mさんがどうして学校の側に居たのかを説明してくれました。 男性二人は昔のバイト先の後輩で、その内の一人が学校の側に住んでいるとのことでした。 今日は3人で遊ぼうという事になり、ちょうど下校時間だからと私を待ってみることにしたそうです。 私の隣に居る男性の言葉使いから、その中でも運転席の人が一番後輩だという事が分かりました。 男性二人は、大学生のようでした。
私は、M子に比べて人見知りをする方で、相手が話し掛けてこなければ顔すら余り見ることもありませんでした。 さすがのM子も、あまり話をしませんでした。 年上相手に何を話して良いのか分からない感じだったのだと思います。 当然、私はこの時も、男性の顔を殆ど見ていませんでした。 私の隣には男性が座っていましたが、K先輩と居る時のようにドキドキしたり男性として意識するような緊張は、全くありませんでした。
でも、その距離の近さで、別の事が気になって仕方がありませんでした。 私は後部座席の真中という不安定な場所に座っていたせいか。 少しのカーブで体が揺れることで、隣の男性と腕が触れないようにかなり注意しなければなりませんでした。
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