睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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目覚めは最悪だった。 夢を見た日はいつもこうだ。気だるく体が重い。 そして夢を思い出さなければいけないような気になる。 いつも思い出すことはできないのだけど・・・ 「雪さん、準備ができたそうです。」 笙の元気な声がする。そうか、今日は禊をして出発するんだった。
朝日と土の香りが春を感じさせる。 「7日の間にとりあえず冬支度をさせてくれる村につきましょう。」昨夜、笙が言っていた。 そうだった、ここの春は短い。たった7日の間なんだ。 今年の婚礼は旅籠ではできなかったんだなぁ。
狐に連れられて小さな泉についた。 「湧き水なので冷たいのですが、我慢してくださいね。」 「うん、お湯で禊ってのはしないんだろう?」 僕のなんとなく言った言葉に2人は軽く笑ってくれた。
ゆっくりと腰まで泉に浸かり狐に渡されていた桶で肩から水をかける。 不思議と冷たさは感じず、なんだか暖かい気がした。 泉から上がるとなんだかさっきまでのもやもやした気分は軽くなっていた。 軽い朝食のあと狐の包んでくれたお弁当を持ちすぐ出発することにした。
「雪さん、旅の間は魚以外の肉は食べてはいけませんよ。旅籠に戻れなくなりますから。」 「なぜ?」 「笙さん、お願いしますね。」 「あなたに言われなくともわかっています。」 「旅籠に戻りたかったら忘れてはいけません。」 何度もしつこいくらいに狐は肉を食べてはいけないと言った。 でも旅籠では食べていたけどな?疑問に思いながらもひとつめの村へ向かった。
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