睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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2011年09月17日(土) |
そしておきざり・・・ |
「みるくはかわいそうだ」という祖父の気持があまりに大きく 親戚に反感を買ったのはもちろんだが そんなことよりも父のころころとかわる女遍歴が子供心に煩わしかった。
彼女の気を引くために飲み屋に連れて行かれることもしばしばあった。 相手は店に来てくれてなんぼ、色々と面倒を見てくれたりもした。
そして酒癖の悪い父は何度も問題を起こす。 土砂降りの夜中に警察から電話が入り祖父とともに迎えに行ったこともある。 そのころの車は古かったのか祖父の仕事用だったのか 雨がよほどひどかったのか、車の足元に水があった記憶がある。 祖父は出来るだけ父が原因であたしが親戚から色々言われないように 気を配ってくれていた。 親戚の中にあたしが一人取り残される事のないように。 面倒を見ているあたしよりも親戚に気を配っていたようにも今になると思われる。
親戚に苛められる事は度々あった。 ただ一つ記憶しているのは 祖母の鏡紛失事件。 祖母は合わせ鏡が出来るように手鏡を2つ持っていた。 同じガラの丸いものと楕円のものと。 ある日楕円の物だけがなくなった。 あたしが失くした・・・という事になった。 無くなる前にあたしが使っていたらしいのだ。 確かに祖母の鏡は好きだったがちっとも記憶にないのだ 持ち出した記憶も割った記憶も。 だが、実際ものはなくなっていた。 いくら知らないといってもあたしのせいだと皆が言い出した。 わからない知らない・・・最後には面倒になって 「家出ごっこしてるときに割った」と言った。 どこで割ったのかどこに捨てたのかさらに聞かれたが 口からでまかせそんなものどこにあるんだかわからない。 誰も信じてくれないんだとその時悟った。 父さえも味方にはなってくれなかったのだ。
そして小学校に上がる直前母親ができた。 父が通いつめてようやく結婚までこぎつけたのだろう。 「母親になるとは聞いてなかった」彼女の言い分はもっともだ。 しばらくは彼女は仕事に出たがった。 父は許さなかった。 ある夜大喧嘩の挙句彼女の店用の衣装は全て父によって切り裂かれた。
彼女は朝はパン食。牛乳に砂糖をいれを一旦温め冷蔵庫で冷やしたものを飲む。 料理は出来なかった。 父のいない日はレトルト・・・ 小学校の初めての遠足の時しょっぱくて食べられないおにぎりをもたせてくれた。 子どもの足で歩いて10分ほどのところに叔母がいた。 もちろん祖父に面倒を見てもらったあたしを快くは思っていないが 父の子であることをかわいそうと思っている一人ではあった。 「おなかすいた」とよくお邪魔していたそうだ。 あたしのなかでは遊びにいっていたと言う記憶なのだけれども。
そんなある日学校から帰ると玄関に鍵がかかっていた。 買い物にでも行ったのだろうと玄関に座って待ってみた。 夕やけ空になっても誰も戻ってこない。 もちろん父が帰宅するのは泊まりの現場でない時でも夜遅くだ。 少し薄暗くなってさすがに寒くなってきたので 件のおばの家に向かった。
母と呼んだ人に置き去りにされたのだ。
そしてまた祖父の家へと引き取られる。
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