吐き出す息が仄白く濁り、その色に気温の低さを改めて実感する。 澄み切った空と、少し乾いた風が肌を撫でる。思わず肩をすくめ、マフラーに口元まで顔を埋めた。運動したばかりだから体は暖かいのだが、条件反射のようなものだった。 「城之内!」 子供の声。誰だろうかと思って足を止めて振り返れば、長い髪をなびかせて走ってくる姿が見えた。 「なんだ、モクバじゃねぇか」 これは珍しい。彼が一人で歩いている所など滅多にないように思えた。大抵いつも兄と行動をともにしているか、部下やらボディーガードやらが周りを取り囲んでいるというのに。 「一人か? めずらしいな」 「ああ、あいつらは帰らせたんだ」 そう言って黒塗りのランドセルを見せるモクバの姿は、普通の小学生そのものだ。 「ふぅん」 黒髪のこの子供。 なかなかかわいらしいのだが、あの過保護な兄のことを思うと将来が不安なような気もする。 「で、城之内!」 「あ?」 「今日うちの社で豆まきやるからさ、お前も来いよ!」 「豆まき?」 「そ、まぁそう言っても撒くのは豆だけじゃないけどな。お菓子とか色々、な。」 「へぇ、神社でやるような感じか」 「そ。うちは社の宣伝も兼ねてるからもちろんうちの商品の引換券も混じってるわけ」 「金かかってんな、いちいち」 「そうでもないさ。あ、お前は家のほうに来てくれよな。兄サマもお前なら呼んでいいって言ってたからさ!」 じゃあな、と笑ってモクバは城之内を追い抜いて走り出した。 子供らしいその小さな背中を見送り、くすりと笑った。 「ったく、あいつも素直じゃねぇなぁ」 そういいながらあのおもちゃ会社の社長のことを思うと、少し笑みがうかんだ。 偉そうに高笑いをあげながら豆やらをバラまく姿を思い浮かべるとやたらとおかしく、実際そのときが楽しみなような気がした。 -- 亜久津すら変換できないもどかしさで泣きそうです。 (なので城海とか書きたかったんだよ本当は…)
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