桜の花弁が舞う入学式後の体育館裏で会ったのが初めてでした。 その後話す機会もなにもありませんでしたがその後も名前などは知っていましたし、気にはなっていました。 学年上位成績者十人の名前は張り出されるものでしたから。そもそも一学年最初の期末考査では一位などをとった彼でしたから、その時点でももう知らない生徒などいなかっただろうとも思います。しかもそれでいて暴力沙汰のほうでも名前を売っていたものですから、彼の存在を知らないでいる事は難しかっただろうとも思うのです。 彼が学年一位をとったのはそれきりではあったけれど、それでも成績発表時には必ず十位以内に入っていたのだから大したものだと思っていました。しかしながらやはりそれでいて悪評も高く、それに加えて学校に来ない日も多かったようで、まったくもって彼の成績の良さは不思議でありました。 勿論自然に校則を違反して髪を銀髪に染めてしまうような彼ではありましたがその成績のよさから、教師などは最初こそ彼を更生の道へと進ませたかった様でした。しかしやはり彼はとりあうこともなく、仕舞いには暴力沙汰で初めて停学処分を受けたことによってそれもあきらめたと聞きました。 とにかく気になってはいたものの、彼とは教室が一番遠く、また、接点ができることも、作ることもできずに日々は過ぎ,俺もいつの間にか興味を失いかけていました。 ところが機会というのはまたいたづらに巡ってくるものでありまして、ふとしたはずみで俺は彼とちゃんとした知り合いになったのです。 冷たい雨が降り始めた十月の中旬でした。 部活動で遅い帰宅途中に、丁度喧嘩を済ませたばかりの彼に会ったのです。 雨はざぁざぁと容赦なく降り付けていましたが、彼は傘などもたず、ずぶぬれでした。 いつも立てている髪の毛も、もう雨に濡れきって重力に逆らうことはやめていました。 それはたしかあにあの彼でした。桜の花弁の代わりに彼の白い学生服には血が散っていましたが、不思議とそれは美しくこの眼に映りました。 雨がその血をにじませていましたが、きっとなかなか血の跡は取れないのだろうと思いながら、俺は彼に笑いかけました。そして賞賛の言葉を述べましたが、彼はそれもわずらわしそうに顔をしかめ、ただ一言「くだらねぇ」と言い残して去って行きました。 その後ろ姿は具体的に言い表すことはできませんが、悲しげであったという言葉が一番しっくりくるのではないかと思います。何が悲しいのかと聞きたくもありましたが、遠ざかる彼の後ろ姿を俺はただじっとその場から見送ることしかできませんでした。 俺は雨が早く止んで欲しいと思いながら彼の後ろ姿を見送りました。真っすぐな道でありましたから、なかなか長い時間そうしていたと思います。 雨はいつの間にか強く打ち付けるようにふり付けていたように思います。 -- 今日学校で書いてた話で本当はもうちょいあったんだけどどうにも面白くないので没。 うーんなんだか気持ち悪いね、これね。
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