2005年06月26日(日) |
私のしたこと、吐き出したかった告白は、これで終わり。 |
その後退院した姉に、もう突っかかる事はしなかったし、姉とも少し距離が開いた。 家の中ですれ違っても、お互い存在しないような感じ。 「次お風呂誰が入るん?」とか、業務連絡が唯一の会話だった。
数週間が過ぎた頃に、ふと姉が話しかけてきた。
「あんだけ暴れたら、すっきりしたやろ?」
「うん、かなり。」
不思議と、さらりとした、トゲも戸惑いもなくすんなりと出てきた言葉だった。
嫌悪感とか、蔑視の気持ちとか。 そういう負の感情をあの時姉に全部ぶつけられて、全部昇華されて、 あの頃は本当に、清々しい気持ちにまで達していたようだ。
私が姉を殺そうとした事、ずっと一人の人間としてみていなかった事に対する罪悪感はまるでなかった。 ただ、何か淡々としたものを感じただけだった。 こんなもんか、みたいな風の。 自分のした事の重大さなんて、これっぽっちも感じていなかった。 あれは、して当然だったから仕方がない、そのくらいにさえ思っていた。
私がどうしてこんな日記を書くほどに後悔したのか、そのきっかけはなんだったか。
…姉が、友達との電話で笑った瞬間。
思い知った。
姉が笑った。 ああ、そうか。 この人にも友達がいて、この人の世界があって、この人にも幸せがあるんだ。
当たり前のことに、その瞬間初めて気付いた。
私はずっと姉のことを精神病の人間だとしか見ていなかった。 一人の人間としてなんて見ていなかった。
ただ、私にとって邪魔な存在だとだけ思っていた。
驚いた。ガツン、と、音がなりそうなくらいの衝撃だった。
姉が、電話をしながら笑っていた。 ただ、それだけのことだったのに。
私は自分のしたことの浅はかさ、愚かさを知った。
それからが、私の後悔の始まりだった。 私は何てことをしてしまったんだろうか、と。
いっそ姉が私を口汚く罵ってくれれば、また私も姉を蔑視できて楽だったのに。 姉はそうはしなかった。
姉の方から話し掛けてくれるようになった。 自分を殺そうとした人間に、姉は何事もなかったように話し掛けてくれた。
私を、許しているんだ。
私はそんな人間を殺そうとしていたんだ。
姉の広量さ、自分の狭量さをまざまざと見せ付けられて、ますます私は後悔した。 自分が醜くて堪らない人間に思えた。
そんな、毎日だった。
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